石垣島「まちのコイン」が実現する“地域資本主義”とは
- 2021/8/22
- 経済
株式会社カヤック(本社:神奈川県鎌倉市)は、石垣島にコミュニティ通貨サービス「まちのコイン」を2021年8月29日より導入する。
利用方法は電子マネーと同じく、アプリのQRコードで電子決済を行うというシンプルなもの。特徴的なのは「資本をどう捉えるか」という点だ。「コミュニティ通貨」は、通貨をおもに”資本”としてではなく”コミュニティ”として活用することを目的としており、従来の「地域通貨(地域でのみ使える資本)」とは用途が少し異なる。コミュニティ通貨・まちのコインは現在全国12ヵ所に導入済みで、石垣島が13ヵ所目だ。
今回、石垣島へのまちのコイン導入にあたり、株式会社カヤックは100%子会社である株式会社カヤックゼロを同年5月、石垣島に設立。他県におけるまちのコインは主に自治体や民間企業が運営しているが、石垣島における通貨運用は、カヤックゼロが行う予定だ。なぜ石垣島なのか、コミュニティ通貨とは何なのか、導入事例について取材した。
“地域資本主義”を目指して
カヤックが開発・運用サポートを行うアプリケーションまちのコインは、QRコードを介して非接触でコインの利用・獲得が可能なコミュニティ通貨だ。ユーザーは地域活動などに参加するとポイントを獲得し、獲得したポイントは加盟店等で利用することができる。なお、円をコインに変換することは不可。まちのコインはあくまでまちのコインという独立した通貨として活用される。
ではどのようにコインを増やすのかというと、主に「体験」を通してコインを増やすことになる。たとえばビーチクリーンやお手伝い、難民支援講演会のシェアなど、コインを「もらう」方法は地域への貢献活動が主となる。街歩きの目的もあるため、歩いているとコインが落ちていることもあるそうだ。
コインで買えるものも様々だ。たとえば家庭菜園の野菜やお祝いのデザートプレート、わけあり商品など、基本的には円では買えないものを買うことができるのがまちのコインの特徴である。
コミュニティ通貨とは
2018年より開発をスタートした、まちのコインは、本社所在地である鎌倉を皮切りに、神奈川県小田原や福岡県の八女など、全国12地域で導入実績がある。
開発のきっかけは、本社代表である柳澤大輔氏がプライベートで行っていた地域活動団体でのこと。毎日のように地域活動についてアイディアを出し合う中で「経済の豊かさでは都心に勝てないが、GDPでは示せない人々の豊かさが地域にはあるんじゃないか」という発想になったそうだ。そこから生まれたのが「地域資本主義」という概念。
人の繋がりは形として示すことができない。人は可視化できないものを「伸ばしていこう」とは思えない。「じゃあ指標をつくりたい」。その着想を皮切りに、地域通貨について考えるようになった。
だがしかし、従来の地域通貨には難点があった。それは円ではない通貨を浸透させるのは難しく、また浸透させるために値引き合戦になってしまうことだ。だがこれらの問題は、そもそも地域通貨を「お金の代わり」として取り入れようとするから浮かび上がるのではないだろうかと柳澤氏は考えた。であれば、お金では買うことができない「コミュニケーション」や「人とのつながり」を価値としたコミュニティ通貨としてはどうだろう。
そこで立ち上がったのがコミュニティ通貨・まちのコインだ。まちのコインで売買が可能なものを「お金で買えないもの」に絞ることで、円とは違う通貨とした。たとえばBARのマスターに相談する権利や、レストランオーナーがスーパーでの野菜の選び方を教えてくれる権利などがある。まちのコインという指標なしでは、知ることもできない裏メニューが大半である。