昨季21位の「速攻での得点」を向上へ キングス、ヴィック・ロー獲得の狙いは…
- 2023/9/7
- エンタメ・スポーツ
プロバスケットボールBリーグ1部の琉球ゴールデンキングスは5日、2023-24シーズンに向けて新加入したヴィック・ロー(27)の入団会見を沖縄市内で開いた。昨シーズン、リーグの歴代最高勝率を更新した千葉ジェッツ(千葉J)のエースとして攻守に活躍し、天皇杯全日本選手権では優勝も経験したローは「今シーズンはまた天皇杯に加え、Bリーグチャンピオンシップでも優勝できるように頑張りたい」と意気込んだ。
ローは今月16、17の両日に沖縄アリーナで行う群馬クレインサンダーズとのプレシーズンマッチで、初めてファンの前でプレーする予定。
2連覇に向けてチームの「アップグレード」(安永淳一GM)を図った形のこの補強。会見に同席した安永GMと桶谷大HCは獲得の経緯や狙いについても説明した。ポイントは昨シーズンにリーグで24チーム中21位と低調な数字だった「ファストブレイク(速攻)での得点」と、ローの「若さ」である。
ダンカンの「年齢」とローへの期待感
会見の冒頭で挨拶した安永GMは来シーズンに向けて「ライバルたちはキングスを叩くため、(チャンピオンから)引きづり下ろすため、さらに強いチームをつくってくる」との危機感を述べ、続けて昨シーズン限りで退団したジョシュ・ダンカン(37)について触れた。
「これまで多くの選手がキングスのユニフォームを着てくれましたが、ダンカン選手はその中でも最高と思えるくらい、オンコート、オフコートも含めて素晴らしい選手でした。ただ、彼は年齢的にこれからピークに向かうというより、ピークから下り坂に向かうというところで、チームがさらに強くならないといけない中で、そこが引っかかっていました」
一方、まだ27歳と若いローについては、オーストラリアリーグ(NBL)でファーストチーム(Bリーグのベスト5に相当)に選ばれた2シーズン前から注目していたことを明かした。ただBリーグでどれだけの活躍ができるかを推し図ることや、人間性を把握するまでには至らず、オファーに「二の足を踏んだ」と振り返る。そんな中、ローが昨シーズンに千葉JでBリーグデビューを果たし、攻守でチームをけん引する姿を見て「本当に羨ましい。とてもいい選手を取りそびれてしまった、という目で見ていた」という。
昨シーズンの終盤、「優勝争いをしているキングスをさらにアップグレードするのであれば、ロー選手を獲得することがチームのためになる」と交渉を重ね、獲得に至った。
桶谷HC「トランジションの期待値が上がる」
ローは昨シーズン、歴代最高勝率を記録した千葉Jでトップスコアラーとなる平均17.1得点を挙げ、3P成功率は37.6%に達した。リバウンドは8.1本、アシストは3.0本といずれも高いスタッツを記録したほか、高い身体能力を生かしてディフェンスでは相手のガードからビッグマンまで幅広くマークしていた。
そのため、桶谷HCも「バスケにおける必要なスキルを全部兼ね備えていて、プレーのインテンシティー(強度)も高い。アウトサイドシュートも含め、どれを取っても一級品です。今シーズン、キングスが上昇していく上で貴重な選手になると思っています」と高く評価する。
昨シーズン、リバウンド王を獲得したジャック・クーリーに加え、アレン・ダーラムという重量級のインサイド陣を抱えるキングスにあって、ローはこの2人とはタイプの異なる外国籍選手だ。指揮官はそれを念頭に、こう語る。
「ジャックはインサイド、ダーラムはアウトサイドもできるけど、どちらかというとペイントアタックをしていく選手。ヴィックは外からのプレーができるから、3人の相乗効果はすごく出てくると思っています」
さらに続けた。
「キングスは昨シーズン、トランジション(攻守の切り替え)からの得点がリーグで下から数えた方が早いくらいの回数だったのですが、ヴィックが入ったおかげでそこの期待値が上がると思います」
ローは機動力が高いため、素早い攻守の切り替えから速攻をつくりだすこともできる。冒頭で記したように、キングスは昨シーズン、速攻での得点はリーグで21番目だったが、今シーズンはさらなる増加が期待される。
強みは「1番から5番まで」こなす能力
会見で最後に挨拶したローは、昨シーズンまで優勝を争うライバルチームだったキングスについて「フィジカルだったり、バスケットボールIQだったりの部分で他のチームに負けない特徴がある。地元が近く、非常に仲良くさせてもらっているクーリーをはじめ、非常に強力な選手を揃えています」と印象を語った。
自身の強みについては「1番(ポイントガード)から5番(センター)までオールラウンダーとしての能力が期待されてると思います。それが長所なので、見てもらいたい」と話す。その上で「例えばクーリー選手が試合に出られない時には自分が5番ポジションでリバウンドを狙う。誰が欠けてもチームのピースとして戦える存在になっていきたい」と意気込んだ。
ホームである沖縄アリーナには「偉大さ」を感じたという。「W杯も見に行きました。ロッカールームも非常に素晴らしい。トップクラスの環境下で試合や練習ができることを非常に楽しみにしています」と高揚感をにじませた。