日本がカザフに25点差快勝 約5千人が観戦、バスケW杯沖縄開催まで1年

 
相手のポイントガードに激しいプレッシャーを掛ける河村勇輝(右)=8月30日、沖縄アリーナ(以下、全ての写真は「Basketball News 2for1」提供)

 沖縄が本戦開催地の一つとなっているバスケットボールFIBA男子ワールドカップ(W杯)2023のアジア地区2次予選は8月30日、F組の日本(FIBAランキング38位)対カザフスタン(同68位)を沖縄アリーナで行い、日本が73ー48で快勝した。日本の通算成績は1次予選の結果を持ち越して3勝5敗となり、同組で6チーム中5位となっている。

 開催国枠で日本の出場が決まっている本戦まであと1年。平日午後6時の試合開始にも関わらず5,337人の観客が詰め掛け、来年に向けて沖縄でも徐々に盛り上がりが出てきていることがうかがえる試合となった。

平日の試合にも関わらず、沖縄アリーナには多くの観客が詰め掛けた

 W杯本戦は来年8月25日から9月10日に沖縄、フィリピン・マニラ、インドネシア・ジャカルタの3都市で行われ、沖縄の会場となる沖縄アリーナでは1次、2次ラウンドの計20試合が実施される予定だ。

守備から流れ 後半にチームプレー向上

 今回のカザフスタン戦に向けては、事前合宿に参加していた琉球ゴールデンキングスの岸本隆一が全治約1~2週間、コー・フリッピンが全治約2週間のケガを負い、代表チームから離脱した。キングスファンにとっては残念な結果となったが、海外挑戦中のSG馬場雄大やPG富樫勇樹(千葉ジェッツ)、SG比江島慎ら日本のトップ選手が沖縄に集結し、高い注目を集めた。

ゴール下へ切り込み、ファウルをもらう馬場雄大

 2019年のW杯以来の代表復帰となった帰化枠のCニック・ファジーカス(川崎ブレイブサンダース)など、昨年からヘッドコーチ(HC)を務めるトム・ホーバス体制下では新しい選手もいたことで、序盤は連係不足から守備やリバウンドに苦しんだ。

 それでもチーム最年少21歳のPG河村勇輝(横浜ビー・コルセアーズ)が前線から相手ガードにへばり付くような激しいプレッシャーを掛けて流れをつくり、第1クオーター(Q)でリードを奪った。ただチームの強みであるスリーポイントの確率が上がらず、27-27のロースコアで前半を折り返した。

速攻から右手一本でダンクを叩き込む吉井裕鷹

 後半に入ると、ホーバスHCが「ニックがローポストに入り始めてから、うちのバスケができた」と振り返るように、日本が攻勢に出る。前半は高い位置でボールを持つことが多かったファジーカスがインサイドを攻め出したことでフリーの外角シュートが生まれ、井上宗一郎(サンロッカーズ渋谷)が連続スリーをヒット。張本天傑(名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)が相手ビッグマンに対して体を張った守備でミスを誘い、そこから速攻で吉井裕鷹(アルバルク東京)がダンクを叩き込むハイライトも生まれ、一気に2桁リードを奪った。

河村 沖縄アリーナに「ホームを感じられた」

 最後まで強度の高い守備を維持した日本は失点をわずか48点に抑え、快勝。ホーバスHCは「どうやってコンビネーションを出すかが一番の問題だったと思います。ニックが入り、彼は特別な選手。回りの選手がどう彼を使おうかとパスとかをしたけど、前半はうまくリズムに乗れなかった。後半はアジャストできました」と試合を総括した。

試合後の会見で笑顔を見せるホーバスHC(左)と河村

 15分ほどの出場にも関わらず、7得点、7アシスト、5スティールと万能な活躍を見せた河村も「ハーフタイムでしっかりと話し合い、守備の強度を上げたり、無駄なターンオーバーを減らしたりして、後半は自分達のバスケができました」と語り、HCと同様にこの試合を評した。

 また、本戦で日本の”ホームコート”となる沖縄アリーナの雰囲気については「沖縄というバスケ熱の高い街でたくさんの方々に試合を見にきてもらい、すごくホームを感じられました」と語り、「W杯で沖縄の皆さん、そして日本の皆さんと一緒にバスケをしたい。自分もその場に立てるように頑張りたいなと思います」と意欲を見せた。

元キングスの須田 沖縄で日の丸背負い「選手冥利に尽きる」

持ち味である高確率のスリーを武器に、代表で台頭してきている須田侑太郎

 2017~19年に2季キングスに所属し、高い人気を誇った須田侑太郎(名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)は「キングスを離れてもずっと応援し続けてくれる人もいますし、その方々の前で日の丸を背負ってプレーできて、選手冥利に尽きます。改めて沖縄のファンの熱さも感じられたし、すごく嬉しい瞬間でした」と感慨深げに語った。

 激しい代表選考レースに身を置くが、「W杯に『絶対出る』とか意識し過ぎることなく、目の前の合宿や練習を一つ一つクリアした先にW杯があると思ってます。まわりにはすごい選手がたくさんいるので、自分らしくいることを大事にして、それで結果が出れば最高ですね」と淡々と話し、個人としてのさらなる成長を誓った。


長嶺 真輝

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ながみね・まき。沖縄拠点のスポーツライター、フリーランス記者。
2022年3月まで沖縄地元紙で10年間、新聞記者を経験。
Bリーグ琉球ゴールデンキングスや東京五輪を担当。金融や農林水産、市町村の地域話題も取材。

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