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ネアンデルタール人のDNA解析したOIST教授 沖縄で探究する古人類学
- 2022/4/21
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沖縄科学技術大学院大学(OIST、恩納村)に古人類学の世界的権威がいる。ネアンデルタール人のDNAを解析し、現生人類に一部遺伝子が受け継がれていることを突き止めたスウェーデン出身のスバンテ・ペーボ氏(67)だ。20日にOIST構内で研究者、学生向けのセミナーを開いた。今後、1970年ごろに八重瀬町で発見された約2万年前の人類「港川人」の研究にも意欲を示している。
2020年5月にOISTの非常勤教授に就いたが、これまで新型コロナウイルス感染症拡大の影響で長らく沖縄を訪れることができていなかった。2019年のOIST卒業式でも講義を行ったが、コロナ禍に入ってからは今回が初の対面セミナーとなった。
現生人類との交雑判明 世界的大発見
大昔に存在した人類であるネアンデルタール人は約4万年前に絶滅したため、現生人類との遺伝的繋がりは無いと考えられてきた。
しかしペーボ氏が大量のDNA配列を高速で決定できる装置「次世代シークエンサー」を活用し、2010年にネアンデルタール人の全DNA配列を世界で初めて解読したところ、現生人類にネアンデルタール人のDNAが一部受け継がれていることが判明した。現生人類の祖先がネアンデルタール人と交雑していたことを突き止め、世界の人類学における大発見となった。
その他、ペーボ氏がロシアにあるデニソワ洞窟から出土した骨片のDNA配列を解析した結果、未知の人類であったことが分かり、「デニソワ人」と命名した。
OISTは「可能性を秘めた場所」
セミナーではデニソワ人、ネアンデルタール人、現生人類のゲノム(遺伝情報)を比較し、それぞれに特徴的な遺伝子を解説。それらが混ざり合った結果がどのような機能につながったかなどを説明した。終了後には参加者から「人類の脳がどのように発達してきたか」など活発な質疑応答が行われた。
OISTを「世界中から優秀な人が集まり、施設も素晴らしい。非常に可能性を秘めた場所」と高く評価するペーボ氏は「セミナーができてとても幸せ。やっとOISTのユニークな方々と直接会うことができた」と笑顔を見せた。
博士課程の学生で、高機能タンパク質をつくる研究をしている落合佳樹さんは「直接お話しを聞けるまたとない機会で、とても光栄でした。考え方の幅が広がりました」と満足そうに振り返った。
「港川人」の共同研究などを模索
今月13日には、東京で開かれた「日本国際賞」の授与式に参加したペーボ氏。国際科学技術財団が科学技術により人類の平和と繁栄に貢献した研究者を表彰し、日本のノーベル賞とも称される同賞において、2020年に生命科学分野で受賞した。
コロナ禍の影響で過去2年の式典が中止となり、直近3年分の受賞者が表彰された今年の式典には天皇・皇后両陛下も参加し、ペーボ氏は「本当に驚きの体験。このような賞を授かることは光栄でした」と振り返った。
今後は沖縄とドイツの2拠点で研究を進める。「OISTではネアンデルタール人の遺伝子をマウスに注入したりして、機能的なモデルシステムを構築したい。非常にワクワクしている。ドイツでは古代人の遺伝子解析を進めたいです」と説明した。
港川人の研究にも前向きで「アメリカに研究しているセンターがあるので、共同研究ができないか可能性を探っている」という。第二次世界大戦で亡くなった人の遺骨を調べ「どの遺骨がどの遺骨と親戚関係なのか、なども研究できないかと思っている」と展望した。