沖縄のバス路線は複雑? 車社会の公共交通としてのバスをあらためて考える
- 2022/3/30
- 社会
車無しでは移動ができない「車社会」と言われる沖縄。高校卒業、あるいは大学入学と同時に運転免許を取得するのがほぼ“当たり前”となっているが、日常的にバスを利用している人はどれくらいいるだろうか。
那覇市のバス路線図に目をやると、カラフルな線が電子機器の基盤のように張り巡らされていて、一見しただけでは正直よく分からない。けれど「複雑で分からない」「車があるからいいや」と軽く目を逸らしてもいいことなのだろうか。将来は誰しも免許を返納しなければならない時が訪れる。その時、車以外で移動手段として最も使う可能性が高い乗り物は…。
なぜバス路線が分かりにくいのか、その背景や現状について「バスマップ沖縄」主宰の谷田貝哲さんに話を聞いた。
使うか使わないかの差が大きい
―沖縄のバス路線は複雑なんじゃないかというイメージがあります。那覇近辺の路線図の見た目もすごいことになっていますが。
「そもそもバスは飛行機や鉄道とは異なり、“きめ細かい移動手段”という特性があります。それぞれの地域で、利用者の皆さんのニーズを踏まえた上でバス停が設置されている。それゆえ、特性上路線が複雑にならざるを得ないということは1つ言えると思います。
現状でも特に那覇を中心とした中南部はパッと見かなり複雑なビジュアルですけど、例えば全ての人のニーズを満たすということを考えたら、もっと凄まじく雑多なことになるかもしれません。
もう1つは、バスを使っている度合いによって複雑さを感じるかどうかという感覚は変わると思います。普段から通勤や通学の手段としてバスを使っていれば、毎日の自分の生活に直結することなので、そこまで複雑とは感じないはずです。
ちなみにバスについてのアンケート調査では『使ってみると案外便利だった』というリアクションも一定数あるので、使うか使わないかという差はかなり大きいでしょうね」
運行拠点として機能する駅が無い
―沖縄の観光はレンタカーありきで、公共交通が充実していないという声も聞こえてきます。普段使いはしていない観光客や地元の人が「初見で使う」という視点からはどうでしょう。
「その意味では、客観的に分かりにくい部分があるのは事実だと思います。車社会になる前、バスが移動手段の主役だった頃は、積極的に分かりやすくしなくてもお客さんが乗ってくれていたかもしれません。その時の感覚のまま、バス会社側が分かりやすくしようとする努力を怠ってきた面があるのは否めません。
これは県内に限ったことではないのですが、『バス利用者が減っていく現状が普通』という認識が業界にはうっすらとあって、毎年集客が減るのを見守っている状況が続いているように感じます。路線やバスの車両自体をダウンサイジングすることではなく、本来ならバスにたくさんの人が乗ってくれるような取り組みが必要なのに。
新規参入するバス会社が増えてきてからは、バス会社によって同じ位置にあるのに違う名前のバス停があったり、A地点からB地点に行くのに複数のルートがあったりするというケースもあるし、中にはネーミングライツ制をバス停に適用しているパターンもあって、命名権の契約期間が終わるとバス停の名前が変わるという利用者を戸惑わせてしまうような例もあります。
さらに、バスの運行拠点として機能するゆいレールの駅がほとんど無いというのも分かりにくさの要因に数えられると思います。県外の鉄道の大きな駅は、そこから放射状に路線が伸びていてビジュアル的な分かりやすさがありますからね。こうした点を踏まえると、初見での使いやすさという点では親切とは言えないかもしれません」