石原慎太郎氏死去 沖縄にとってその意味は
- 2022/2/2
- 社会
衆参両院議員を務め環境庁長官や運輸大臣などを歴任し、東京都知事に転身した石原慎太郎氏が死去した(享年89)。石原氏と言えば、都知事時代の2012年、尖閣諸島を東京都で保有するため地権者から買い取ることを呼び掛けたところ、短期間で約14億円が集まり、日中関係悪化を危惧した当時の野田佳彦首相が、慌てて国有化に舵を切った経緯がある。沖縄が受けたその余波を考える。
寄付を呼びかけると短期間で14億円
石原氏が都知事就任4期目の2010年9月のことだ。尖閣諸島周辺海域で漁船を装ったとされる中国の船が海上保安庁の巡視船に体当たりする事件が起きた。この様子は後に映像が流出し、尖閣諸島の危機が叫ばれるようになり、同海域の安全を守ろうという機運が高まった。当時の民主党政権が船長らを処分保留で釈放したこともこの流れに拍車を掛けた。
そこで石原氏は12年4月、ワシントンで講演し、埼玉県在住の地権者と結んでいた魚釣島、北小島、南小島の3島を東京都で買い取り、都有地にする意向を電撃表明した。石原氏が買収するための寄付を呼び掛けると、短期間で約14億円が集まり、石原氏の発言と合わせて、中国側が態度を急速に硬化させるものとなった。
同氏の言動はその後、大型化しただけでなく大型機関砲も装備していると言われる海警局の大型船を日本の排他的経済水域や領海内に呼び込む結果となった。中国は接続水域内での航行を繰り返し、日本の領海に侵入して日本の漁船を追尾し、自国の漁船の操業を守っていると国内向けにアピールまでしている。
また昨年2月には海警局の武器使用権限を明確化した「海警法」を施行している。海警局の母体はもともと中国国務院(政府)の「国家海洋局」という行政組織だった。それが18年の組織再編で、中国の治安維持を担当する人民武装警察部隊(通称・武警=ウージン)の傘下に入り、海警法の制定で法的にも準軍事組織に改編された。
対する日本側は2022年現在、石垣に1千トン級の大型巡視船10隻と、那覇海上保安本部所属のヘリコプターが登載可能な3100トン級の大型巡視船2隻が専従し、全国からも大型巡視船が派遣されている。昨年11月にはヘリ搭載型の大型巡視船「あさづき」(総トン数6500トン)も就役した。