琉球漆器ピアノついに完成 那覇市役所でクリスマスコンサート
- 2021/12/26
- 社会
後継者不足など技術の継承が厳しい状況にある琉球漆器。その職人たちが美しい技法とともに琉球漆器を広くPRしたいと始まった「琉球漆器ピアノプロジェクト」は、加飾されたピアノがほぼ完成し、クリスマスコンサートが開かれた。
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3人の匠が4月から再生作業
琉球漆器事業協同組合の上原昭男(うえはら あきお)前代表理事をリーダーとして、那覇市伝統工芸館の体験工房で講師も務める3人の匠たちが4月からピアノ再生の作業を進めていた。
昼休みの市役所でコンサート
12月23日の正午過ぎ、昼休みの那覇市役所1階ロビーに流れてきたピアノの音色、そして楽し気な歌声。琉球漆器の技法で美しく装飾された那覇市の市花・ブーゲンビレアや市蝶・オオゴマダラなどが施されたピアノの伴奏で、20人余りの女性たちが「赤鼻のトナカイ」や「お正月」といったこの時期にぴったりの童謡から「赤田首里殿内」など沖縄の楽曲まで、遊戯の身振り手振りも交え、15曲ほどを歌い上げた。
25分ほどのコンサートだったが、忙しそうに行き交う人の姿が多かった市役所が、この時間は足を止め聞き入ったり、幼いころから耳に馴染みある歌へ手拍子で一緒に参加する人もいたりと、穏やかで心温まるひと時となった。
保育士OGたちが参加
女性たちは那覇市内の公立保育所の保育士OG。なかでも今回の「琉球漆器ピアノ」の原型となるピアノが、かつて40年余りも音色を奏でてきた“故郷”でもある松川保育所(すでに閉園)に勤務していた人たちにとって、また格別な日となった。いきなりのリクエストにも記憶をたどりながら、すべての楽曲でピアノを弾いた新城順子(あらしろ よりこ)さんもその一人だ。
「私が(松川保育所に)居た頃からのピアノがこんなにきれいに蘇ってくれて、すごく胸がいっぱいです。当時の子どもたちの顔を思い浮かべながら楽しく弾きました。長い間子どもたちを見守ってくれたピアノなので、これからも那覇市だけでなく沖縄の人たちや子どもたちの心を癒してくれる存在になってほしいと思います」
那覇市内でストリートピアノとして設置予定
保育士チームの音色や歌声を笑顔で楽しんだり写真を撮る人たちの中には、漆器職人チームのリーダー、上原昭男(うえはら あきお)さんと森長武一(もりなが たけいち)さんの姿もあった。上原さんは「このピアノがもともと関係していた方々が弾いたり歌ったりすると聞いていましたが、やっぱり盛り上がりが全然違います。良かったです。完成がイブに近く、クリスマスコンサートという形になったのはタイミングとしても良かったと思います。漆器がピアノも(加飾)できるし、ちょっと手法を変えればインテリア関係にも結び付けられる工芸であることも見ていただけるのではと感激しています」と笑顔で話した。
今後、琉球漆器ピアノは、誰でも触れて弾くことのできるストリートピアノとして那覇市内に設置されるが、具体的な場所は未定だ。関係者の話によると、那覇市制100周年記念事業の補助金を受けていることもあり、公共性ある場所が一つの条件だが、公募のような形を想定しているとのこと。心和ます漆器ピアノの行き先はどこになるのか、こちらも楽しみだ。