遠山光一郎の「沖縄VSアジア国際都市」5:都市環境と生活インフラ
- 2021/8/20
- 経済
日本の一人当たりの平均所得でシンガポールは日本を超え、他のアジアの都市でもマネージャー以上の管理職クラス給与は日本より高い傾向になっている。一般的な物価をニューヨーク、ロンドン、シドニーなど欧米の国際都市と比較すると、マニラ、ジャカルタ、バンコク、ホーチミンは大分安いと思うが、給与水準の上昇と経済発展に伴う物価上昇率は凄まじい。
デフレが進む日本社会
ホーチミンは私が駐在していた1995年ごろは道端のアイスコーヒーやフォーは約3−6千ドンだったのが、今では道端の心地よい店は激減し、クーラーの効いた店や洒落た店で2−6万ドン以上など10倍以上支払うことになった。
アジア各国で大人気の回転寿司やラーメンなどは日本での販売価格の約2倍はするし、客単価が数千ドル(数十万円)の高級寿司店も富裕層で賑わっている。
その反面、日本はデフレで、値段は上がらないが味やサービスの高品質は保たれ種類も豊富である。これではアジア各地からインバウンドで訪れる方々が爆買いするのも頷ける。その中でも沖縄は特に安く感じる。私が学生時代にお世話になったコザ・中の町の“吉元弁当‘などは具沢山で低価格でデージマーサイ。帰郷の際に訪れたら妻や子供達が歓喜していた。
沖縄の課題「個人移動の障壁」
沖縄でも鉄軌道の取り組みが始まり今後の計画が期待される。
今後、国際都市を目指す目指さないにしても、きちんとした取り組みは必要で、きちんとできないと県民生活、観光誘客を含め様々な弊害が出るであろう。観光プロモーションを仕掛ける時に、アジアの方々に懸念されていた一番の点が「個人移動の障壁が高い」ということであった。
バスなども運営時間、運行回数や乗り心地など気をつける必要があるかもしれない。ただ運転手の運転やサービス精神は、アジアの他の国々と比較すると日本の方が何倍も親切で高質であろう。ハードもそうだがソフトも万人に優しいものでないといけない。
中国、香港、シンガポール、マレーシアやタイでも地下鉄や電車が発展しており、今後も拡張を続け東京並みに整備されていくであろう。タクシー、バイクタクシー、三輪車タクシーなど他の移動手段も多い。またGlabなどのライドシェアが東南アジアで越境ビジネスとして浸透しており、どこに行くのも便利で低価で利用できる。個人的には各国出張時にいつも値段交渉やレシート有無でタクシーなどのドライバーともめていた不快な時間が解消されたことは大きい。
「渋滞の少なさ」も経済的・精神的にも重要な点である。シンガポールは高税率車両価格や所有権取得義務で、街中を走る総車両数を調整している。市内に入る時に料金を自動徴収するシステム「ERP」を取り入れ、時間帯による車両数量調整の他、フリーウェイや一方通行の拡充によりスムーズな車の流れを作るなどした結果、渋滞が極端に少ない世界有数の都市となっている。これは渋滞が特にひどいバンコクやジャカルタなどと比べると正反対の軸に位置する。
私も東南アジアでの移動で、アポの30分前に到着するよう移動しても、結果として2時間以上の遅れになったことが何度もあり、時間的損失はすごいものだと身を以て体験している。