県がウチナーネットワークの世界拠点を設立 JICA沖縄内で始動

 

新たに新設したウチナーネットワークコンシェルジュ

 沖縄県は、約42万人ともいわれる海外のウチナーンチュ(県出身者・県系人)同士や沖縄県民とのつながりを次世代へ継承するプラットフォーム施設「ウチナーネットワークコンシェルジュ」を今年度からJICA沖縄国際センター(浦添市)内に設立し、世界各地からの情報集約・発信などに励んでいる。海外沖縄県人会らは念願のコンシェルジュ設立を喜び、期待を寄せている。県が設置したコンシェルジュ設置の背景や機能、期待の声などを紹介する。

資料館建設要請⇒既存施設活用へ

 コンシェルジュが設置された経緯は、1987年まで遡る。県内の関係団体から沖縄県に対し、海外県系人の窓口となる資料館を設立してほしい、と趣意書が提出されたことが始まりだ。1995年には、国際交流情報センター(仮称)の早期建設がウチナー民間大使会議より提言され、県は建設事業費を計上していたが、行政方針の転換によりハコ物事業は着手を見合わせ凍結していた。

 その後、2001年に国際交流センター(仮称)の早期建設提言、2015年に国際交流会館(仮称)建設の要望、2018年に「世界のウチナーンチュセンター(仮称)」の設置要望書が相次いで提出されていた。

 関係団体は、ネットワークを統括するムートゥヤー(本家)として、ハワイ、北米、南米の県系子弟が、一世移民の居住地域を越えてアジア・ヨーロッパなどグローバルに流動しつつある状況のなか、将来のウチナーンチュネットワークの維持・強化・発展のために拠点整備が必要だと訴えた。海外県人会や民間大使らからは「県人会同士の交流促進、情報交換の仕組みの形成」に期待がよせられた。

 県はハコ物として新しく建造するのではなく、既存の施設を活用しようと調整した上で日系移民と親和性の高いJICAと連携し、JICA沖縄国際センター内での設立に至った。

人的ネットワーク継承

 コンシェルジュでは、人的ネットワークの継承、情報発信・集約、交流活動促進、歴史継承推進、相談窓口などの5つの機能を担う。

 コンシェルジュの1つ目の機能は、人材育成による人的ネットワークの強化だ。留学や研修で沖縄に滞在したことのある県系人を辿り、お互いの交流活性化を促すとともに、世界各地で活躍する彼ら彼女らの「人材データベース」を、SNSと連動しながら構築していく。

ウチナーンチュ子弟等留学生(県HPより)

情報発信・集約

 2つ目は、既存の「世界のウチナーネットワーク」ウェブサイトとSNSを連携しながら、多言語での情報発信や集約を担う。海外の県人会のイベント情報など海外の沖縄社会の情報を集約し、発信していく。ウェブサイト内の記事や動画アーカイブでは、玉城知事のメッセージや首里城の復興過程の情報発信、琉球舞踊や空手の歴史などを閲覧することができる。

県運営のウチナーネットワークのYouTubeチャンネル
WEB:https://wun.jp/

交流活動促進

 3つ目は、オンライン・オフラインイベントの定期的開催による交流活動促進。現在、世界中のウチナーネットワーク関係者と沖縄県民が交流する機会は「世界のウチナーンチュ大会」など限られた機会しかなかったが、コンシェルジュでは、SNS交流やオンラインイベントを活発に行い、日常的な交流活性化につなげていく方針である。

アルゼンチンの若者団体と行われたオンライン交流イベントの様子=5月末

歴史継承の推進、相談窓口担う

 4つ目は、歴史継承の推進。移民歴史に関するモノ、史料を情報収集し、一般来場者が検索や閲覧できるように整備し、貴重な史料は県立図書館や県立博物館・美術館など関係機関と連携して整備していく。また、移民ルーツ調査の多言語サポートなども行う予定だ。

 また、多言語によるメールや電話による相談窓口も担う。関係団体間の連絡調整、幅広い連携体制構築を行う。

 運営を担当する、一般社団法人世界若者ウチナーンチュ連合会(WYUA)と公益社団法人海外青年協力協会沖縄事務所(JOCA)は、「コンシェルジュは、各種取り組みにより世界のウチナーネットワーク関係者とつながるとともに、沖縄にいらっしゃる際にはぜひ直接訪問したいと思えるプラットフォームとなるよう取り組んでまいりますので、積極的にご活用ください」と呼びかけている。


<ウチナーネットワークコンシェルジュ>
場所:JICA沖縄内(沖縄県浦添市字前田1143-1)
運営団体:世界のウチナーネットワーク次世代継承共同企業体(世界若者ウチナーンチュ連合会、WYUA)/公益社団法人海外青年協力協会沖縄事務所(JOCA)
WEB:https://wun.jp/

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