新型コロナ再流行は必ず起こる 冷静に備えを 

 

 中国武漢発の新型コロナウイルスは、瞬く間にパンデミックとよばれる世界的大流行となり地域社会を危機に陥れている。世界中で国境封鎖やロックダウンとよばれる都市機能封鎖が行われている。

 カミュの小説ペストに描かれたような都市封鎖が21世紀の現代に出現することは私の想像に全くなかった。おそらくまだ公表されてない悲惨な状況が中国武漢では起こっていたのであろう。そうでなければあのような徹底した都市封鎖が行われることはない。また、欧米先進国の致死率や経済の混乱を見れば、戦争にたとえられる危機であるというのも大げさではない。

 この病気は中国では昨年の11月頃には確認されていたようである。人間に病原性を示すコロナウイルスはこれまで6種類知られていた。

 有名なのはSRDSとMERSである。SRDSは17年前に今回と同じく中国に始まって世界中を恐怖に陥れた。私の記憶ではハクビシンという野生動物を食べたことから感染が始まったといわれた。症状が激烈であったため、各国の水際対策と呼ばれた強力な検疫活動で封じ込めることができた。数か国で院内感染などを発生させ大問題となったが、最終的には比較的小さな流行で収束し以後は発生がない。MERSはラクダが関係しているようで中東地域で今なお少数の発生があるようである。他の4種類は冬風邪の原因になるものである。

 今回、人に感染する7番目のコロナウイルスとして世界中に混乱を引き起こしている。このウイルスが何より厄介なのは、SRDSと冬風邪の原因となっているコロナウイルスとのちょうど中間的な性質をもっていることである。若い人にとっては無症状もしくは通常の風邪症状であるが高齢者はSRDSのように激烈な症状を起こし致死率も高い。年齢によってその病原性が極端に違うため従来の対策では流行を阻止できない。

中国には原因究明の責任がある

 何故、今頃中国でこの新型のウイルスが出現し流行したのか。そのことは誰でも知りたいことである。従来知られていたコロナウイルスが突然変異を起こしたのか。あるいは近年急速に技術進化した遺伝子操作によって誤って作られたものか。はたまた、当初報道されていたように海鮮市場で売られていた野生動物を食したために発生したのか。少なくとも中国当局は原因究明の責任がある。原因を探る世界の科学者に正確な情報を提供すべきである。そのことを受け入れなければ世界からの信用をさらに大きく失うであろう。

 世界の多くの国では、気づいた時にはすでに大きな流行が始まってしまいコントロール不能になった。あまりの致死率の高さと医療崩壊により、急遽都市封鎖を行っている国も多数ある。一方、台湾やニュージーランドのように、国境封鎖の徹底的な封じ込め政策をとって患者発生を封じ込めている国もある。

日本の致死率の低さ ファクターXとは

 日本は世界のどの国とも異なり、意図したことかどうかは別として、強力な行政命令によるロックダウン策や徹底的な封じ込め策も取らず、自粛と呼ばれる市民の良識に期待した対策で緩やかな流行を目指した。日本の策は合理的判断の上での選択された対策ではなく、成り行きに従っているようにみえた。そのため当初、多くの識者から激しく批判された。

 しかしながら、我が国の状況を世界の状況と比べれば、現時点において致死率はかなり良い状況で流行規模も抑制されたものになっている。世界の識者からは、”奇妙な成功“との評価もあるようである。致死率において世界に比し低い値の我が国においても、すでに900人を超える方々がお亡くなりになっており、成功という評価はどうかと思うが国民一丸となって頑張った結果であるのは間違いない。

 将来、行政権力による強権的な都市封鎖よりも国民の良識に信頼した対策が良い成績を上げた極めて稀有な例として歴史に記録されるであろう。

 我が国の致死率の低さが何によるものかまだ明らかになってないが、ファクターXがあるのは間違いないようである。私は単純に日本の医療が優れていることと使われている治療薬が有効であるからだろうと考えている。世界の専門家が注目する薬の大部分が日本で開発され、既にほかの病気で使われているものであることも日本の医療の優位性を示している。

さらに大きな流行も 冷静な準備を

 危機において最も大切なことは冷静である事である。過度の悲観論は最も有害である。今回の流行前、沖縄県内において数万人、全国では数十万人余の人が死亡するとの意見もあったが当たらなかった。勿論、今後とも安易な楽観はできない。さらに大きな流行は必ず起こる。ここ3ヶ月に経験したことを冷静にふり返って準備するべきであることは言うまでもない。

 最後にこの病気の特性上、高齢者はうつらない努力を若い人たちには高齢者にうつさない努力を強く求めたい(社会経済活動のため若い人たちの発病リスクは仕方ないと考えなければならない)。適切な社会経済活動を維持しつつ医療破綻を発生させない流行コントロールがどうしても必要である。

 若い人のマスク(他者にうつさないアイテムとして極めて有用)は、自分のためではなく高齢者を守るためとても大切である。夏場大変なのはわかるが、引き続き是非ともマスクを着けていただきたい。高齢者の一人として強くお願いしたい。

 成功への道は極めて狭い道だが日本人には必ずや成し遂げられると私は信じる。

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宮里 達也

宮里 達也

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沖縄県医師会副会長。
1978年大阪大学医学部卒業後、琉球大学医学部産婦人科教室助手を経て宮古保健所を皮切りに県内各保健所に勤務。沖縄県保健福祉部保健衛生統括官、保健福祉部長、北部福祉保健所長を歴任。2014年に県を退職後、北部地区医師会病院に入職。

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