進む県産品の台湾進出 製造力乏しく好機逃す課題も 掴め2300万人市場
- 2021/5/29
- 経済
また陳さんは「台湾人にとっては『沖縄=黒糖』というイメージがあります」と説明する。「台湾の人が沖縄に行くと、必ずと言っていいほど黒糖を買ってきます」というが、このトレンドの波に新しく乗りつつある県産品として、前述のゴーヤーに加えて、ウコンも挙げられている。「沖縄の健康長寿のイメージが強いから、売りやすいですよね」
競争に“後出し”され負ける県産品
しかし、せっかくこのような“沖縄ブランド”があるのにも関わらず、流通面や製造面のスケール競争で遅れを取っている。「沖縄には、小規模のメーカーや工場はありますが、(大規模に取引を行う)商社的なところがありません。県外の大手メーカーでは、流通なども面で太刀打ちできないことも多いです」。
その結果、県外の企業に“後出しじゃんけん”で負け続けている現実がある。
実際に、石垣島の「食べるラー油」を台湾マーケットに参入させた際に、発売当初こそ好調でブームにもなったが、その後瞬く間に県外メーカーの同様の商品が大量に入ってきてマーケットを席巻、元来の県産品が競争に敗れてしまったことがあった。同じような現象は「黒糖飴」でも見られ、近年ではまさに、県産品が人気を獲得していたウコン関連商品でも見られている。
「なので、沖縄の商品はいつも『先導部隊』になっているんですよ。いつもなんですよ」と悔しさを滲ませながら「沖縄は商品を製造する力が県外と比べると小さいという点では、仕方ないのかもしれません。商売は自由ですから」と現状を捉える。
仮に競合商品が登場する以前であっても、その製造規模が限られていることは、その時点でデメリットになる。
「沖縄の調味料関係の企業に商社から注文が入ったのですが、最小ロットが10トンだったんです。もうこの時点でチャンスを逃してしまいましたね」
したがって、沖縄県産品はその供給量から、一般の量販店向けではなく、物産展用に販売される場合が多いという。
製造拠点や投資先として未熟な沖縄
沖縄が持つ健康長寿のイメージから実際に「台湾のバイオ関係のメーカーは沖縄に投資したいんですよ。沖縄に工場を置いて、中国大陸やシンガポールに販路を広げたい企業もあります」と陳さん。沖縄で作られた商品、ということ自体がイメージ戦略上の武器にもつながる。
しかし、工場建設をする段階でさえも、一筋縄にはいかない。
「沖縄で工場を造るとなると、全部最初から始めないといけません。県外の場合は、近くに部品のメーカーや工場など、関連する企業がありますよね」
もともと沖縄への投資意欲を見せていたその台湾の企業は、結局静岡県の工場と提携して自社商品を東南アジアや中国へ展開し、利益を上げているという。