女性の社会進出で「男性も生きやすく」 起業支援・沖縄ガールズスクエア

 

お試し出店で試行錯誤

 そこで沖縄ガールズスクエアが2019年12月から新たに展開しているのが、お試しで自らの店を運営し、試行錯誤を重ねていく「トライアルキッチン」の事業だ。カフェやレストラン、お菓子屋さんなど、さまざまな飲食店をするために必要な場所や設備を、週1日プランだと月2万円(税別)で借りることができる。特に菓子製造業の許可を取っている同様の施設は、現在のところガールズスクエアが県内で唯一だという。いわゆる「テストマーケティング」の場として、本格開店につなげてもらう。

 ロケーションものどかな一帯の幹線道路沿いにあるため「人ごみを避けるコロナの時代には良いかもしれません。穴場っぽくて良いかもしれないです(笑)」と話す。

 飲食店の開業は、アクセサリーなどの小物販売や、カメラマンやライターなどの技術系の業態に比べて、実際に調理設備の資金がかかったり、衛生関係の許可を取得したりする必要があるなど、始めるまでのハードルが高い。

 「『メニューはどういったものにして、値段はどうしようか』『一人で回さないといけない場合、お水はセルフサービスにしようか』など、やってみないと分からないことも多いです。一からキッチン設備を用意するのは大変なので、初期費用なしで無理なく実践してもらえるような場を提供しています」

女性が元気な沖縄社会

 沖縄の開業率は高い。経済産業省中小企業庁の調査によると、2018年度の開業率は沖縄県が全国一の6.5%で、全国平均を2.1ポイント上回っている。一方で、廃業率も高く全国4位の3.9%(全国平均3.5%)だ。

 沖縄県は特に女性の起業率が高いといわれる。岩渕さんは「女性が元気で、意欲的な人が多いからではないか」と分析する。全国一の離婚率をも関連付けながら「前向きにリスタートできる人がたくさんいることの表れでは」と話す。

 「女性は(妊娠や出産など)ライフスタイルの変化が激しく、子育てなどの時間的な制約がある人が多いので、個人事業やフリーランスで働くことはプラスだと思います」と岩渕さん。

「若い世代ほど生き方の多様性を知っている」

 岩渕さんは続ける。
「コロナで『色んなとこから収入を得る働き方があった方がいい』って思った人もいたはずなんですよ」

 特に沖縄県では、観光関連やイベント関連の産業を中心に大打撃を見舞われた人が続出した。この状況下で「働き方の多様性」にもスポットライトが当たり始めている。

 人によっては「2つ以上の仕事をする」ことや「フリーランス」という働き方に肯定的ではないこともある。女性が自宅で仕事し、生計を立てていることを「趣味」と捉える人がいる一方で、実際に自作のアクセサリーや小物をインスタグラムなどで公開、直接販売し、一般のサラリーマンの収入をはるかにしのぐ人も、今や決して珍しくはない。

 「SNSの普及などで、若い世代ほどさまざまな価値観に(早くから)触れる機会が多く、いろんな生き方を知っていると思います。自分のためにやる『趣味』は、人の役に立った時に『起業』となると思います。なので、この2つを明確に分ける必要はないのかなと考えています」

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