40㍍先に中国公船が 尖閣諸島でいま起きていること

 

――海上保安庁(海保)から事前に出漁を控えるようにとの働き掛けはありましたか。

「いや、以前からないです。私には『日本の領海ですからどうぞ釣りに行ってください』と(笑)。海保は漁民を守る立場に立っています」

――政府と現場とで温度差があるんですね。

「政府がどういう考えを持っているのかは分かりませんが、日本の領海で漁をするのが我々漁民であり、中国の顔色を窺って漁を控えるのが漁民ではありません。そこは海保も国土交通省も同じ認識だと思っています。ただ中国の艦船がジェットエンジンを蒸かして領海内に入ってくると、魚も逃げて漁ができない状況が生まれます」

――漁民にとっては死活問題ですね。

「中国の手法はこうです。南沙(英名スプラトリー)諸島の前例があります。まず漁船を締め出してから埋め立てに掛かり、実効支配を強めていく。我々漁民は魚を取るのが役目であり、国は国民の生命と財産を守るのが本来の姿です。しかし現状は中国の公船を領海に入れて平然としているにすぎません」

――昨年11月王毅外相が来日した際、『日中共同で違反する船を取り締まりましょう』と言ったことに対する政府の反応ですね。茂木敏充外相は「(尖閣の領有権に関する)日本の立場を説明し、中国側の前向きな行動を強く求めるとともに、今後とも意思疎通を行っていくことを確認した」と腰砕けの発言でした。

「1978年に鄧小平副首相が来日し『棚上げ論』を提唱した際も日本側は明確な態度を示しませんでした。後になって『日本は棚上げ論に同意したじゃないか』と言われる始末で、中国外交のしたたかさが見て取れます。『今後とも意思疎通を』なんて言ってないで、抗議するのが国の外交です」

――王毅外相はまた「一部の真相が分かっていない日本漁船が釣魚島(魚釣島の中国名)周辺の敏感な水域に入る事態が発生しており、中国側としてはやむを得ず、非常的な反応をしなければならない」と茂木氏に苦言を呈し、「引き続き“自国の”主権を守っていく」と釘を刺しました。

「茂木氏は即座には反論せず、スルーしていました。ニヤニヤしながら怒りもしない。この国の大臣クラス以上の人間には、国を守るという気概が感じられません」

――「日中共同管理」を唱える有識者もいますね。

「自国の領海を乗っ取られて『仲良く』なんて言えますか。自国の領土、領海は自分たちで守るんです」 

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