「前に」繋ぐサッカー、“後輪”の改善が鍵 昇格へJ3・FC琉球が新シーズン始動

 

岡澤「前に速いサッカー突き詰めたい」

ボールを追い掛けるFC琉球の選手たち

 オフに主力だったFW阿部拓馬やMF清武功暉、MF中野克哉、DF柳貴博ら中堅、ベテラン陣が多く退団し、12人の新加入選手を迎えた。所属選手29人のうち20人が25歳以下となり、平均年齢は25.1歳で大きく若返った。DF増谷幸祐、FW岩渕良太は出戻り組だ。

 昨シーズンは攻撃的なサッカーを掲げながら戦術理解が深まらず、総得点はリーグ15位の43点止まり。総失点の61点はリーグワーストに落ち込んだ。守備の球際における激しさが足りず、攻撃に転じる際のチームの一体感が不足するなど課題が散見された。

 サイドバックとして積極的に攻撃に参加したDF高安孝幸も「一気に攻撃に行くべき場面で(後ろで)繋ぎ、ちょっと遅れるところがありました。守備ではハードワークする部分で他チームより足りなかったと感じます」と振り返る。

 それらを踏まえ、新シーズンはどのようなサッカーを目指すのか。昨シーズン途中に加入し、後ろから攻撃を組み立てるボランチとして定着したMF岡澤昂星はこう展望する。

 「去年監督が鍾成さんに代わってから、細かいところでも繋いで前に速いサッカーのベースを作りました。今年もそういうサッカーができる選手が揃っていると思うので、昨年よりさらに細かく突き詰めたいです。相手に触られない流れるようなパスワークで終始ボールを握り続け、常に『前に前に』というサッカーを組み立てていければいいなと思っています」

 この言葉からも分かるように、「繋ぐ」ことはあくまで「前に」という要素がセットになることが理想だ。昨シーズンは後ろでボールを回してミスから失点する場面も多かった。“後輪”が素早く前方に回転しないことで“前輪”との間が間延びし、J2に昇格した頃のような全員で畳み掛ける攻撃は実現しなかった。

理想は「前の選手が下りない」こと キーはDF増谷ら

新体制発表会でサポーターの「FC琉球」コールを受ける選手ら=11日、那覇市の琉球新報ホール

 攻撃の改善に向けてはディフェンダー陣の変化がポイントとなる。金監督が「120%」と評価した補強にその理由が垣間見える。自身が昨年6月まで率いたガイナーレ鳥取から獲得した増谷とDF鈴木順也について選手としての特徴を聞かれ、金監督はこう答えた。

 「守備では1対1でしっかりと対応でき、攻撃に関してはボールを持てる選手です。後ろでボールをしっかり持ってくれると、あまり前の方で受けに来なくて済むので、前の選手は相手の嫌な所で待てる。そういう形を作っていきたいなと思っています」

 昨シーズン、前線の選手が後ろに下がってボールを受ける場面は確かに多かった。指揮官は退団したFW阿部拓馬を例に挙げて続けた。

 「去年でいうと阿部拓馬が下りざるを得ない状況があった。ああいう形は思わしくない。もちろん拓馬と話しながらやってはいましたが、そうではなく、より前に人をかけられるような感じが理想かと思ってます」

 この後ろから攻撃をつくるスタイルについては、2016~19年の4シーズンに渡って琉球に所属した増谷は実績がある。特にJ3で優勝した2018年は瀧澤修平とセンターバックを組み、果敢な守備と前への繋ぎで攻撃的サッカーに大きく貢献した。今シーズンは元日本代表GKの六反勇治も横浜FCから期限付き移籍で加入したため、守りの安定感を高め、前への推進力を高めたい。

 J3は2月23日開幕。琉球は初戦、アウェーで奈良クラブと対戦し、ホーム開幕戦は3月2日、3日のいずれかで松本山雅FCと戦う。チーム設立20年目という節目の年となった2023年を終え、21年目という新たなステージに向かう琉球の戦いぶりに注目だ。

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長嶺 真輝

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ながみね・まき。沖縄拠点のスポーツライター、フリーランス記者。
2022年3月まで沖縄地元紙で10年間、新聞記者を経験。
Bリーグ琉球ゴールデンキングスや東京五輪を担当。金融や農林水産、市町村の地域話題も取材。

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