“火中の栗”を拾う理由は… FC琉球に帰ってきた金鍾成監督が口にした「使命感」
- 2023/9/20
- エンタメ・スポーツ
「同志」である喜名前監督の存在が後押し
琉球の監督に就いたのは5年ぶり。沖縄の突き抜けるような青い空を見上げ、強い日差し、暑さを体感して「戻ってきたな」としみじみ感じたという。ただ「しっかりやらなければという気持ちになっています」「一生懸命、一生懸命やります」と繰り返し自身を律する言葉を使った通り、懐かしさに浸る余裕はほとんどなかったよう。
2シーズン続けて低迷を続ける今の琉球を率いることは、相当な覚悟が必要だったはずだ。JFLに降格となれば、自身も批判の対象になることは間違いない。何が後押しとなったのか。理由はこうだ。
「同志の喜名が監督をやっていたので、応援していた。彼が辞任という形になり、『それなら自分がやろう』という気持ちになった。彼との関わりの中で、自分で勝手に使命感みたいなものを感じました」
喜名前監督は、前回自身が琉球で監督を務めていた時にヘッドコーチを担っていた盟友だ。今回の就任前には喜名氏から「頑張ってください」とエールを受けたという。今後も「またゆっくり会って、いろいろアドバイスを受けたい」と強い信頼関係をうかがわせる。
所属10年目の富所「バランスがすごいうまい」
メディア対応では「僕は常々、サポーターの方に『楽しみにしてください』と伝えています。楽しみを与えられなかったら、チーム、選手、監督の存在価値は消えてしまう」と一人のサッカー人としての信条ものぞかせた。
今夏に沖縄アリーナなどを舞台に開かれたバスケットボール男子ワールドカップで、日本代表がパリ五輪の出場権を獲得する活躍を見せたことに触れ、「僕はバスケが盛り上がり、それが沖縄で行われたことがすごくうれしかった。我々も、皆さんが見て楽しかった、次の試合が待ち遠しいと思うようなゲームを一つでもできればと思っています」を力を込める。
発する言葉には内に秘める熱量の高さがにじむが、話しぶりは極めて穏やかで、丁寧な受け答えからは誠実さが感じられる。所属10シーズン目で、以前の金監督体制下でもプレーした数少ない選手であるMF富所悠は「基本的には優しいけど、スイッチが入ると練習がすごい長くなったりする。感情的なところと、チームを冷静に客観視してる部分がある。バランスがすごいうまい」と評する。
また、富所は「(J2に昇格した)当時は当たり前のように毎週勝っていて、いい思い出しかない。攻撃的な選手が揃っていて、みんなが同じ方向を向いてやれていた。今は当時と状況もメンバーも違うけど、すごく楽しみです」と胸を高鳴らせる。金監督の性格や戦術をよく知る選手として「監督、選手の間に入り、コミュニケーションを取りながらやっていきたい」と自らの役割にも目を向けた。
5年前、琉球を一つ上のステージへと押し上げて沖縄に歓喜をもたらした指揮官が、今度は負のスパイラルから抜け出すための救世主となるか。第2次金監督体制下の初陣は、23日にアウェーである7位の奈良クラブ戦となる。どのような戦いぶりを見せるか、注目だ。