“ハンド指導者×教員”新チーム「コラソンU-15」の初代監督・東江功子さんの強み

 

“夫婦二人三脚”で重ねた経験 銘苅淳らを輩出

自身のハンドボール人生を振り返る東江監督

 チームを率いる時は、いつも夫と二人三脚だった。正作さんは浦添高校を卒業後、実業団の名門・大崎電気でプレーし、海邦国体では沖縄成年男子の4強入りに貢献するなど名プレーヤーだったことで知られる。東江監督は顧問として監督を務め、教員ではない正作さんが外部コーチとして細かい技術指導をするという役割分担が自然と生まれていった。

 「夫はハンドボールの技術を教えることに長けているので、私自身も一緒に指導をしていて学びが多くありました。一方で、私は教員として日々子どもたちと接しているので、挨拶や礼儀、マナーなどの生活面も教えられることが強みです。夫が教えている事を分かりやすく子どもたちに伝えるという役割も担っていました」

 港川中学(浦添市)の男子を見ている時は、その後に日本代表や強豪国ハンガリーのトップリーグでもプレーすることになる銘苅淳を擁し、2000年に同校を全国3位に導く。同年の全国大会JOCジュニアオリンピックカップ男子では沖縄選抜を率いて日本一に輝いた。

 その後も2004年に神森中学(浦添市)女子で全国準優勝、06年にJOC女子で優勝、12年に浦添中学男子で全国3位に入るなど、ハンド強豪県で知られる沖縄の中学年代を正作さんと共に支え、多くの国内トッププレーヤーを輩出してきた。

 コーチングに当たっては「自分も楽しくてハンドボールを続けているので、この競技は『楽しい』ということを伝えることを重視してきました。シュートが入ったら嬉しいとか、新しい技術ができた、とか。選手たちのやってみる、できる、分かるという過程を大事にしてきました」と振り返る。生活の乱れから試合への出場が危ぶまれる生徒もいたが、マネージャーとして大会に同行させるなど、様々な工夫を重ねながら子どもたちの成長と向き合ってきた。

「感謝」「自立」に重点 沖縄から世界へ

共にコラソンU-15を指導する東江監督(中央奥)と、長男でメインコーチの太輝さん(右)

 教員は「天職」と自負するが、「一度休みたかった」と定年退職後の再任用は見送った。それでも深い“ハンドボール愛”が衰えることはなく、コラソンからのオファーを受けてU-15の監督就任を決意。火、水、木、土の週4日間、指導に汗を流し、現在は大会前ということもあり、月に2回ほど日曜日に練習試合も行なっている。

 部活動とは異なり、選手たちは会費を払ってハンドボールを習いに来る。そのため、「選手たちはコラソンというチームを選んで来るから、しっかりそれに応えられるものを返さないといけない。子どもたちがコラソンを通して何を学び、どう成長していくかが大事です」と気を引き締める。

 就任発表時、石田孝一GMが「(中学年代は)小学生とは違い、自立も必要となり、ハンドボールだけではなく勉学も強化するという観点から、中学で活躍されておりました東江功子さんを監督に招聘いたしました」とコメントした通り、今後も教育的な観点での指導も求められる。それを念頭に「親御さんがお金を出して、送り迎えをしてくれるのは当たり前じゃない、という感謝の気持ちや、自立心を育てることをテーマにやっていきたいです」と“人間教育”に重点を置く。

 技術指導においては、選手活動と並行し、U15のメインコーチを務める太輝さんとの二人三脚で進めている。現役トップ選手の知見も交えながら、「私自身も、もっともっとコーチとして勉強し、指導力を高めていきます」と向上心は尽きない。

 柔らかい笑顔を見せながら、「まだチームは発足したばかりですが、夢は大きく、目標は高く掲げ、将来は日本のトップリーグ、そして世界で活躍する選手を育成できるチームになっていきたいですね」と、力強く決意を語る東江監督。部活動からクラブチームに活躍の舞台を変え、今後も優れたプレーヤーの育成に手腕を発揮してくれそうだ。

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長嶺 真輝

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ながみね・まき。沖縄拠点のスポーツライター、フリーランス記者。
2022年3月まで沖縄地元紙で10年間、新聞記者を経験。
Bリーグ琉球ゴールデンキングスや東京五輪を担当。金融や農林水産、市町村の地域話題も取材。

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