中国系企業が土地取得の沖縄の無人島 7年半前の上陸記
- 2023/2/20
- 社会
かつては澱粉工場も
砂浜沿いには防潮林のモクマオウの並木が続く。アダン(タコノキ科)のとげに気を付けながら林に分け入っていった。伊是名島はこの屋那覇島も含め、具志川島、屋ノ下島の無人島にもハブは生息していないので、安心して散策できる。
島の真ん中辺りに建物がある。シャワー室のようだ。蛇口をひねったが水は出ない。村が管理しているという。その近くにバンガローやリサイクルの電柱で作った遊具のようなものを見つけた。近年、都会の子どもに自然を体験させる合宿を運営する企業が設置したものだと、案内した村人は説明した。その企業の公式ホームページをのぞいてみると、かなり高額なツアー料金だ。
さらに歩くと見晴らしが良くなった。島全体が藪の中にあると思いがちだが、かつて道として踏み固められていたのではないかと思われる歩きやすいところや、畑ではなかったかと思われる平坦な場所もある。まったく手つかずの島ではないはずだ。文献をひもといた。
「戦前上里順一氏が本土の事業家と共催で、俗に蘇鉄会社と称して、蘇鉄を原料とする澱粉工場と、それに付随する天水タンクや住宅が設置されて、ジャンジャン操業をしていた矢先、生憎米軍の熾烈な空襲に逢って、設備は全く破壊され、人的被害もあったのでとうとう中止のやむなきに至った」(『伊是名村誌』1966年、中本弘芳編、小雨堂)
戦前戦後にかけて飢餓に見舞われた沖縄では蘇鉄の実をすりつぶし、水にさらしてあく抜きして澱粉を食料にしたが、本土の事業家がそこに目を付け、事業化していたことに驚かされる。そして現在も島外の人々の投機の対象になっていることを暗示しているようにも思える。
ヤギの群れと自生するノニ
草で覆われているものの、拝所と思われる石積みや井戸の痕跡が明らかに確認できる場所もある。戦前にぎやかだった時代に思いを馳せていると、高台の物陰でガジュマルの木の葉を揺らして何かが横切った。数頭のヤギの群れだった。遠目から立派な角がそれと分かる。
何年前かは忘れたものの、村人が伊是名島から連れてきて放ったという。若者たちがヤギ汁にしようと、時々網を張って捕らえようとするのだが、すばしこくてなかなか捕らえられないという。どれくらいの個体がいるのかは確認できなかった。
屋那覇島には、実はサプリメント好きには垂涎の的の果物が自生している。ジュースや酵素などがドラッグストアや通販番組で販売されている「ノニ」だ。インディアン・マルベリー、ヤエヤマアオキ、モリンダなどの別名もある。「抗酸化作用、滋養強壮効果が期待できる」とうたわれ、高いものになると1本5000円の値段が付く。
試しにと数十個もいでホワイトリカーで「ノニ酒」にして時々飲んでいるが、気になる情報もある。日本医師会の公式ホームページによると、ノニは多量のカリウムを含むため、腎臓疾患者がノニジュースを飲んだ後、血中カリウムが高値になったとの報告があるという。また妊娠中の摂取も控えるように注意喚起している。
閑話休題。記者個人的にはノニそのものより、ノニを食んでいるヤギの刺し身に興味が湧く。それはともかく、ノニが自生し、野生化したヤギが闊歩するのどかな屋那覇島は、大金を求めて魑魅魍魎が跋扈する「詐欺師がうごめく島」でもある。次回はその実態をよく知る人物を直撃した。