”耕畜連携”による循環型農業を JA中央会の嵩原専務に聞く沖縄農業の1年と未来

 
沖縄農業の未来を展望する嵩原義信代表理事専務=12月23日、那覇市のJA会館

 コロナ禍に入り3年目。人流が戻ってきたことで農畜産物の需要は徐々に回復してきているが、沖縄農業を取り巻く環境は一層厳しさを増している。2022年もロシアによるウクライナ侵攻などを契機とした飼料価格や輸送コストの高騰が農家経営を著しく圧迫した。地理的な不利性も抱える沖縄農業が今後発展していく道は残されているのか。JA沖縄中央会の嵩原義信代表理事専務は、そのためのキーワードに「耕畜連携」を挙げる。2022年の振り返り、沖縄農業の未来について聞いた。

ー2022年を振り返って。

 世界のサプライチェーンが分断され、輸送コストが高騰し、飼料などでは日本が中国に買い負けてしまう。そのため、食料の値段が著しく上がってしまっているのが現状です。私がJAグループに入って36年が経ちますが、これまでJAは輸入貿易の自由化反対を訴えてきました。しかし、今はもうお金を出せば海外から食料を調達できる時代ではなくなり、世の中は自由化うんぬんではなく、食料の安全保障に目が向き始めています。つまり、日本の食料事情の脆弱性が顕在化したということです。コロナ禍に入って3年が経過し、日本の農業を取り巻く環境には大きなパラダイムシフトが起きています。

ー食料自給率の低さという課題が露呈したということですね。

 自分たちが食べるものは自分たちで作りましょう、という原則は基本的にどの国も同じです。命に関わる問題なので。JAグループはそれをずっと訴えてきましたが、輸入への依存度が高まる中、コロナ禍で日本農業の弱さが表面化してしまいました。

ー県内農業に目を向けると。

飼育された子牛(飼料写真)

 とりわけ畜産は厳しい状況です。需要が落ちたり、飼料価格が高騰したりしても家畜には餌をあげ続けないといけないので、赤字を出しながらなんとか経営をつないでいるという状態の農家も多いです。沖縄の場合は飼料代に輸送費用が上乗せされるという事情もあります。飼料価格が高騰した際の上昇分を補填する国の制度は、価格が上がった分の半分を基金で補うので、高止まりするとほとんど補填金が出なくなってしまいます。今はピーク時より少し下がってはいますが、長い期間で見れば以前に比べて遥かに高く、まさに高止まりしている状態です。もう自力ではどうしようもないところまできているので、行政に支援を要請しているところです。

ー沖縄農業の主力である子牛については。

 今子牛の相場は落ち込んでいます。飼料価格が高騰しているため、成牛を育てる農家が頭数を減らしたりしているため、買い控えが起きています。そのため、価格が下がっている状況です。

ー年末には県内で初めて高病原性鳥インフルエンザが発生してしまいました。

 温暖化の影響もあってか、家畜ではいろんな伝染病が流行りだしています。以前に比べて、農業をする上でのハードルが上がっているように感じます。家畜に限らず、どの農家にとっても今は耐え時で、これを乗り越えれば経営は強くなると思いますので、JAとしても支援を続けていきたいです。

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