ルーツ探り沖縄へ 横浜・鶴見区の南米県系子弟 26年で約400人

 

祖父の親戚と対面し、大きな力をもらった県系3世

 第9回に参加した諸見里みゆきさん(当時中学3年生)は、沖縄出身の祖父、ボリビア人の母を持つ県系3世。2歳でアルゼンチンから生活のため来日した。

 親戚訪問で、1954年に第1次移民団としてボリビアに渡り、30代で亡くなった祖父の生家を訪れた。昔の写真や戸籍の写しを見せてもらい、曽祖父以降の家系図を見て、親類の多くが戦争で亡くなったことを知った。帰る際には、幼い父親の写真をもらい、一枚しか残っていない祖父の写真を接写した。

 彼女は、「日本人か外国人かではなく、ウチナンチューであり日本人であり、ボリビア人であり、アルゼンチンにもつながっている、重なっていることは、素晴らしいことだと思えるようになった」といい、多彩なルーツは自分の誇りと自信につながっていると話した。

チビチリガマでの集団自決で生き残った親戚と出会う県系3世

 第25回に参加した津嘉山仁さん(当時中学1年生)と笑恋さん(当時中学1年生)は、曽祖父が1960年に第10次移民団としてボリビアに移住した県系3世。2018年にボリビアから鶴見区に家族で来た。

 親戚訪問では、曽祖父の伯母にあたる知花カマドさんに会いに読谷村波平を訪れた。知花カマドさんは、1919年読谷村波平生まれで101歳になる。読谷村チビチリガマでの集団自決で生き残ったひとりだと知った。

 カマドさんからチビチリガマでの戦争体験を聞き、思いをしっかりと受け止め、カマドさんが曽祖父の面倒を見ていたことも知り「カマドおばぁがいなかったら、ぼくたちはいなかったかもしれない」とつぶやいた。

カマドおばぁを訪問

ペルーに移住した曽祖父のルーツを探る県系4世

 第25回に参加した比嘉なみえさん(当時中学3年生)は、1916年にペルーに移住した曽祖父の故郷、国頭村安田区を訪れた。

 曽祖父が教員をしていた安田小学校を訪問した後、親戚と初対面。事前調査で親戚が存在することがわかりサプライズで会うことになった。公民館に保管された資料を見ながら雑談し、親戚から曽祖父との関係を話しながら親戚のつながりを確認。その後、曽祖父の生家跡地、門中墓を訪れた。

曽祖父が生まれた家の跡地にて

26年間の実績、沖縄と横浜の多くの人たちの支援に感謝

 1994年から始まったルーツを探る旅は、これまで26年間で約400名ひとりひとりのルーツを探り、ドラマを生みだしてきた。ここまで継続できたのは「沖縄と横浜の多くの人、機関の支援のおかげ」と沼尾さんはいう。

 鶴見区に住む県系人に沼尾さんの存在を聞くと「南米人や沖縄人は沼尾さんにすごくお世話になっている。彼はウチナーンチュではないけど沖縄人よりウチナーンチュ。沖縄への愛は私たちと同じ。今日も沖縄のシャツを着て、オリオンビールが好きな可愛いおじいちゃん」だという。

 沼尾さんは「子どもたちは、南米では日系人として差別を受け、あこがれの日本へ来たら外人といじめられ、自分は何者だと悩んでいた。しかし沖縄で自分を暖かく迎えてくれる親戚に会い、沖縄の自然を満喫、沖縄の歴史を学んで、自分はウチナーンチュであること、色々な国につながっていることを確認し、沖縄から大きな力をもらう」という。

 さらに「旅で学んだことや自分の思いを地域や学校で発信したり、南米以外の外国人の子どもたちに力を与えたり、アイデンティティーの確認の機会を作ったりと、多文化共生の地域作りを目指す取り組みの原動力になっている」と話した。

 沼尾さんは今後について「26年間の実績を活かし、各地域で親戚やルーツを探す方法を示すガイド ブックをスタッフで作ることを考えている。そして、旅を閉じていければと思っている。ルーツを探ることが困難な家族のサポートは継続していく」といい「沖縄から大きな力をもらった子どもたちの今後の活躍が楽しみ」と話した。

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