キングス新シーズン幕開け目前!稲垣AC、山下スキルコーチのキーマン2人に迫る
- 2022/9/30
- エンタメ・スポーツ
やりがいは「プレーの質の変化」 山下スキルコーチ
山下スキルコーチは大阪府出身の35歳。今村佳太と同じ新潟経営大学の出身だ。新潟アルビレックスBBで練習生を経験したが、プロ契約には至らず、その後コーチの道へと進んだ。母校の新潟経営大学で1年間ACをした後、プロ選手の育成をプロジェクトに掲げる地元大阪のHOS実業団バスケットボール部にACとして所属した。そこで転機が訪れる。
当時HOSのHCを担っていたのは、国内のスキルコーチのパイオニアの1人とされる大村将基さん(現三遠ネオフェニックススキルコーチ)。「アシスタントをやらないかと言われて、2年ほど大村さんの下で学びました」と、スキルコーチとしての知識を学んだ。大村さんが大阪エヴェッサのスキルコーチに就任した後はHCに就き、チーム全体を率いながら、選手からの要望もあって海外にも勉強に行きながらスキルコーチに対する見識をさらに深めていった。
2021-22シーズンに大阪のスキルコーチを務め、今季キングスに移った。まだ国内では少ないスキルコーチ。その仕事のやりがいについて「個々の技術、スキルアップというところがメーンの役割になります。1つでも、2つでも選手のプレーの質が変わり、それが試合に反映されるというところはすごいやりがいがあります」と説明する。
今月沖縄アリーナであった群馬クレインサンダーズとのプレシーズンゲームでは「今、岸本選手がシュートにいくための技術を練習しているんですが、それが試合でできた時にベンチの方にちょっと笑顔を向けてくれたりして、そういう時はやっぱり嬉しいですね」と頬を緩めた。
今村から厚い信頼「自分に合ったスキルを学べる」
練習では毎日、選手1人につき長くて30分ずつワークアウトを行う。「スピードがある選手、緩急がある選手、フィジカルがある選手など、それぞれに特徴があるので、その選手に合わせたフットワークや技術指導をしています。なので内容のニュアンスは似ていても、一人一人同じメニューはしていません」と、専門的な見識を基にきめ細い指導をしている。
中でも大学の後輩であり、10年近い付き合いがある今村との信頼関係は深い。山下さんが大阪にいる頃から、オフシーズンに今村が直接出向き、毎年ワークアウトを受けていたという。
今月18日の群馬とのプレシーズンゲーム後の記者会見で、フットワークやハンドリング、シュートの多彩さが増している要因を聞かれた今村は「ずっとお世話になってきた山下さんがチームに入り、スキル面で自分に合ったワークアウトを毎日してくれる。その積み重ねが、試合でのプレーに現れていると思っています」と語り、二人三脚で成長しているとの認識を示した。
一方の山下さん。今村が大学1年の時に初めて会った時は「まだガリガリで、今みたいな花のある選手じゃなかった」と印象を振り返るが、今や日本代表候補にまで上り詰めた逞しい後輩に対して「絶対にキングスの顔にならないといけない選手だし、また絶対に代表に戻れる選手だと思っています」と潜在能力の高さを評価する。
その上で「まだまだ伸びると思っています。性格も良くて、いい意味で素直な選手ではありますが、もう少しずる賢いプレーヤーになってもいい。ボールを持った時に相手が『怖いな』とか、今村選手にディフェンスでつかれたら相手が『嫌だな』と感じる、オーラが出るような選手に育てたいと思っています」と伸びしろを見詰める。
昨季、初のファイナルに進出したが、最終決戦では宇都宮に2連敗で屈したキングス。悔しさを胸に、今季こそ頂点を見据える。山下さんは「昨シーズン果たせなかったチャンピオンになるというコンセプトがある以上、自分はそのために全力を注ぐ。そして選手たちがシーズンを通して調子を落とさず、さらに次のキャリアに繋がるようにしっかりとスキルアップさせていくのが自分の仕事だと思っています」と力強く語った。