【参院選】接戦の伊波氏と古謝氏 安全保障と福祉政策を比較する 沖縄選挙区

 

子どもの貧困対策 両氏とも重点置く

 全国平均の2倍以上とされる子どもの貧困率も大きな課題だ。1人当たりの平均所得が全国最低であることに加え、コロナ禍の影響で生活苦がより厳しさを増す中、両氏とも子育てや親の就労環境の改善に重点を置いている。

 伊波氏は貧困解消に向けて「親の就労や生活を支える包括的な支援を行います」とした上で、子育て世代包括支援センターの全市町村設置と機能の充実を掲げる。ひとり親世帯や若年妊産婦、ヤングケアラーに対する支援のほか、児童虐待防止の法整備と児童相談所の機能強化を図るとしている。待機児童の解消に向けては保育所整備や保育士の確保、処遇改善を見据える。

 子ども4人を持つ子育て世代の古謝氏は、貧困の連鎖を断つために「幼少期から成人に至るまでの保育·教育支援、就労支援に取り組みます」と訴える。生活困窮世帯やひとり親家族、ヤングケアラーへの支援のほか、子どもの居場所の持続的運営も掲げる。保育士の処遇改善などによる待機児童ゼロや、教師が子どもと向き合う時間を確保するための学校の働き方改革も目指す。

高齢者福祉では独自政策も

 高齢化が進む中、福祉政策も注目される。

 伊波氏は高齢者を支える地域包括ケアシステムの充実や認知症対応型共同生活介護施設の整備を盛り込む。年金制度について「最低保障年金制度を創設するなど国民に信頼される制度をつくり、無年金·低年金問題を解消します」とするほか、今後予定されている、一定以上の所得がある後期高齢者医療費の負担増に反対する。沖縄健康医療拠点の形成やドクターヘリの充実化、公営住宅の拡充などによる「住まいの貧困」問題の解消も訴える。

 「沖縄健康長寿復興プロジェクト」を掲げる古謝氏は、PHR(個人のヘルスケアデータの活用)により「一人一人に寄り添う伴走型の健康推進を進めます」とうたう。西普天間住宅跡地で進む国際医療研究拠点構想を推進し、健康産業の集積地を形成するほか、北部基幹病院の早期整備や企業における「健康経営」も推進するとしている。また、日本版CDC(感染症対策センター)の設置でアジアの医療拠点化を図るとの構想も打ち出している。

 その他、様々な分野における両氏の主な政策は以下。

【伊波氏】

・LGBTQ +(性的少数者)をひとくくりにすることなく、どんな人もお互いの個性や多様性を認め合う社会の実現
・意思決定の場への女性参画
・選択的夫婦別姓制度の導入の推進
・沖縄の自然環境を守るとともに、素晴らしい景観の回復
・原発に依存しない再生可能エネルギーの推進
・首里城再建に向け国、県と連携。併せて第32軍司令部壕の保存·公開を進める

【古謝氏】

・LGBTQや外国人、社会的弱者が住みやすい社会の実現
・国立自然史博物館(仮)を誘致し、自然環境を守る持続可能な観光地を世界に発信
・国連の定めるSDGsに沿った各種政策の実現に取り組み、「誰一人取り残さない社会」を目指す
・首里城の早期復元
・空手の振興、FIBAバスケットボールW杯沖縄大会への支援
・多世代による未来の沖縄を考えるワークショップを実施し、より良い未来の実現に向けたロードマップの策定

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長嶺 真輝

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ながみね・まき。沖縄拠点のスポーツライター、フリーランス記者。
2022年3月まで沖縄地元紙で10年間、新聞記者を経験。
Bリーグ琉球ゴールデンキングスや東京五輪を担当。金融や農林水産、市町村の地域話題も取材。

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