コロナのクラスターと噂された松山のbar「結果出るまで怖かった」

 
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 新型コロナウイルス第二波において、沖縄県内で感染が広がっている。第一波では数人の感染で終わったものの、第二波では沖縄県が人口比率は常に上位にあるほど勢いを増している。

 県内では8月20日時点で累計感染者数1804人となり、このうち7月以降の感染は1662人を占めている。クラスター(感染者集団)は病院やコールセンターなどで次々と発生したが、中でも特に大きなクラスターとなったのが、いわゆる「夜の街」であり沖縄一の繁華街である那覇市松山だ。

 まだ沖縄県内ではあまり感染者が少なかったことから、松山でのクラスター発生によって一気に県内に緊張感が走った。クラスター発生の原因となったのは、県外からの持ち込みによるものだった。

 実はクラスター発生の際、「この店から広がった」というデマに悩まされた店があった。

「批判が怖くて何も言えなかった」クラスター店と言われ、結果が出るまで不安な日々

 噂になったのは、松山と若狭に1店舗ずつあるダイニングバー「RIPPLE(リップル)」だ。フレンドリーな接客と豊富なアルコールメニュー、個室カラオケ、ダーツ完備、更には早朝8時まで営業など、ひとりで入れる気軽さがありながらも団体や深夜まで働く人も楽しめる、人気店である。

 そんなリップルだが、ある日新型コロナウイルス感染拡大の店という噂が流れてしまったという。当時のことをリップルオーナー高松 豪大(たかまつ ごうだい)氏にうかがった。

オンラインで取材に応えてくれたオーナー高松豪大氏

 ことの発端は、松山店の店長のK氏が新型コロナウイルスに感染したことだった。K氏は、外出先(リップル出勤日は多くなく、感染から前後数日間はリップルには出勤していなかった)で新型コロナウイルスに感染してしまい、「リップルで感染したわけではない」と言い切ることはできなかったため、店を一時休業した。

 K氏の感染が分かってすぐ店を休業にし、スタッフ全員でPCR検査を行った。それが運悪く、松山でクラスターが発生したタイミングと重なり「クラスターの店はリップルだ」という噂が出回ったのだそうだ。「コロナが出た店名リスト」というリストに店名を書かれSNSで拡散されたり、人を介して噂話が広がったりと、あらゆる手段であらゆるところに拡散されてしまった。

 当時を振り返り高松氏はこう語る。

「結果が出るまで、本当に怖かったです。コロナにかかることよりも、リップルから感染者を出してしまって、大切な人にうつしてしまう可能性があったことが本当に恐怖でした」

 検査の結果、リップルスタッフは高松氏含め全員陰性。だが結果が出るまでは批判が怖く、検査している最中であることすら言えずにいたそうだ。さらに、周囲の人やお客から「クラスター感染出したお店って本当?」「コロナ発祥なんでしょ?」などの連絡が相次いだ。

 周囲の店や友人が「リップルはクラスターを出した店ではない」ということを様々な人に話してくれたことで、極端な誹謗中傷はなかったものの、結果が出るまでの間、自分の店が原因で誰かに迷惑をかけたのでは、という不安が拭えなかった。

「犯人捜し」は本当に必要か

 話を聞き、正直なところ、これが正しい恐れ方と言えるのだろうかと疑問に思った。情報を集めることは自衛のために必要なことかもしれない。だが特定することに力を注ぎ、裏どりもせずに無責任に撒き散らすことは、自衛の範疇を超えているように思う。もしその情報が間違っていた場合、それによって店側がどれだけダメージを受けるかを立ち止まって想像してほしい。 

 松山は特性上、2軒3軒はしご酒をする人が多い街だ。つまり“その店を避ければコロナに感染しない”ということにはならない。むしろ、新型コロナウイルスの潜伏期間の長さを考えると、自分自身が感染源となる可能性も否めないため、「あの店に行かなければ自分は安心だ」と考えるのは少し身勝手な考えにも思える。 

 そしてその当時、沖縄県内では緊急事態宣言も発令しておらず、またGoToトラベルキャンペーンも実施されていた。沖縄一の繁華街である松山に県外から観光客が訪れるのは必然だったし、クラスターが実際に発生した店に関しても、可能な限り感染対策を行っていたはずだ。聞けばリップルも、きちんと感染対策を行っていた。(だからこそ、スタッフは全員陰性だったのだろう)

 それにも関わらず、まるで「犯人捜し」のように店を嗅ぎまわる人が増え、デマ情報が掲載された店名リストが出回ってしまう。そもそも新型コロナウイルスに感染した人は「犯人」なのだろうか。そして調べもせずにリストを作り、拡散した人にはどんな意図があったのだろう。

誇張される“夜の街”「メディアの報道が強すぎる」

 高松氏はメディアの報道について、「表現が強すぎると感じている」と話す。

「テレビからは、頻繁に“夜の街がだめだ”という声が聞こえてきます。確かにワクチンが開発されていないとか、色々わからないことが多くて怖い病気だということは理解していますが、極端に夜の街ばかり誇張されているなと感じます。正直、ランニングコストもばかにならないですし、第二波が本当にしんどいですね…」

 現在松山店は、緊急事態宣言期間の間、休業している。休業中は、松山店スタッフを若狭店で働いてもらうことでなんとか給料を支払っているそうだ。

 先の見えない不安を考えると店を閉める選択肢はなくはないが、やはりスタッフが路頭に迷うことを考えると、閉店は考えられないと話す。

 現在、高松氏は、松山エリアの飲食店に除菌剤や散布機の無料貸し出しや、夏休み期間中に子どもの居場所を与える「子ども食堂」(全スタッフPCR検査陰性結果済み・マスク着用必須にて実施)、シングルママを応援する緊急フード支援などを行っている。

 高松氏は「リップルも周りに助けられ、支えられて今まで継続して営業することが出来ています。こんな時くらいしか出来ないので、なにか少しでも恩返しできれば」と話す。現在営業中の若狭店についても、徹底した感染対策を実施している。

◎リップル公式サイトはこちら
https://ripple-okinawa.jp/

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三好 優実

三好 優実

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香川県出身・沖縄移住歴6年目のフリーランス編集者・ライター。主に沖縄県内の観光・グルメ・経済について執筆。シリーズ本「香川県あるある」の著者。

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