沖縄と情報教育(上)「情報」の国立大受験必須化がもたらすもの

 

 その源流は、IT立国を強力に推進しようとする政府の強い姿勢にさかのぼることができます。政権交代直後の安倍政権が打ち出した2013年6月の成長戦略(日本再興戦略)では、「世界最高水準の IT 社会の実現」を柱の1つに据えるとともに、同日付で「世界最先端 IT 国家創造宣言」を発表し、デジタル社会の実現に向けた政府の強い意志が示されました。こうした大きな流れの中で、子供たちへの情報教育の充実も自然に方向づけられていくこととなったのです。

内閣官房

効果を高める共通テスト受験の必須化

 成長戦略やIT国家宣言が打ち出された翌年、2014年秋から学習指導要領改訂の議論がスタートします。早い段階から情報科目は必修とする方向で進み、最終的に、プログラミングやデータ分析などを学ぶ「情報Ⅰ」の必修科目と、さらに発展的な内容を学ぶ「情報Ⅱ」の選択科目に再編する形にまとめられていきました。

 必修授業に続き、試験科目まで設けられましたが、情報教育がしっかりと根付いていくには、新設の共通テスト「情報」をできるだけ多くの高校生に受験してもらうことが肝要です。これを理由に、大学入試での受験必須化が検討されるわけです。全国の大学に広く採用されるマイルストーンこそ、国立大入試における扱いでした。国立大学協会は、これを各大学任せにはせず、原則「情報」を課すという全体の方針を採択したのです。全国の高校生に情報科目をしっかりと学んでもらうための重要な決定となりました。

沖縄にもたらす影響は計り知れない

沖縄県庁

 こうして国立大での「情報」受験が必須化されましたが、これは間違いなく大きな影響を及ぼすでしょう。コロナ禍の今、デジタル社会の実現に向けた大きな流れの中で、情報教育の推進に反対する声はほとんどありません。だからこそ、授業の必修化、共通テスト科目の新設、国立大での受験必須化の方針がそれぞれ明らかになった段階でも、さほど大きく報道されることはなかったように感じます。しかし、情報科目が国語や数学と並んで「主要科目」になるわけです。情報教育自体を社会全体で大きな潮流にしていくべきではないでしょうか。

 言わば「情報化社会」の要請によって、情報教育の充実がもたらされました。教育界のみならず、社会を挙げてこれを盛り上げていくべきなのです。情報教育ではハード・ソフトともに学校外のリソースを活用することが効果的で、そのためには何より地域全体の機運が高まっていくことが重要です。

 学校では、学習指導要領に基づく標準を超えて、柔軟に地域と連携していくことが今後大切になっていくでしょう。沖縄はIT立県を目指して情報産業の振興に独自に取り組んできました。今まさに、これまで蓄積してきた沖縄の強みを生かした情報教育の更なる進化が大いに期待されます。他の地域には無い、大きなポテンシャルが沖縄にはあるのです。

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