遠山光一郎の「沖縄VSアジア国際都市」8:シンガポールの教育制度

 

賞賛すべき一方で

 シンガポールの経済的発展を見て沖縄から来られるほとんどの方々が手放しでシンガポールの政策を称賛する。私も前回で書いたように、シンガポールを選んだ理由は「シンガポールで子供たちを教育し育てたかったから」だ。しかし、この小さな国の素晴らしい発展を支える、世界からシンガポールに進出してくる大企業へ優秀な人材を共有するための厳しい政策にふれ、体重が増えたり肌が荒れたりするほどストレスを感じている私自身の息子たちを目のあたりにし「私の考えは正しかったのだろうか」と、自問させられているのが正直なところである。

 私の息子たちの学生生活は沖縄で自由気ままに過ごした私のものとはあまりにも違いすぎている。小学校低学年の時に沖縄の公園で、息子たちが沖縄の子供たちに交じって遊んでいるときに体力の違いも強く感じた。妻の時代にはあったそうだが、息子たちが通ったシンガポールの公立小学校で運動会や学芸会などがなかった事にも衝撃を受けた。またバイリンガル教育や主要科目をより専門的に教える一方で、歴史や地理などの科目はあまり時間をかけられていないと感じている。

成績の伸び率でも表彰

 思うことはあるが、私の息子たちを含めシンガポールの子供たちは皆頑張っている。その頑張りを見ると親として少しでもストレスの解消に努めたいと感じると同時に、一般教養など足りない部分は補足してあげたいと考えている。私自身、息子たちの頑張りに刺激されて頑張れることも多く、息子たちを尊敬している。

 シンガポールの制度で一番好きなのは学習表彰制度である。年に一度、シンガポールでの成績上位何%としてトップ学生が表彰されるだけでなく、成績向上率上位何%として同様に頑張った学生も表彰されるのである。成績向上は前年度と比較しての伸び率なので下位から中位、中位から上位でも特にトップレベルでなくても表彰され、面白いことに約1万円の賞金も付く。息子たちはトップレベルの成績ではないが長男がこれまでに2度、この成績向上率で表彰されたことがある。次男は「自分はお兄ちゃんの様に優秀でない」と自信を無くしていたが、2021年の成績向上率でトップ10%になり、本年2月に自治体で開催され地区選出国会議員から賞状を受ける表彰式に参加できた。

 沖縄にシンガポールのような厳しい選別式のシステム導入はどうかと思うが、沖縄でもぜひこのような頑張った学生に夢や希望を与える制度を導入して、学ぶ、向上する喜びを広げてほしいと心から願う。

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