選挙イヤー初戦 名護市長選は現職渡具知氏が再選  玉城知事に打撃

 

 任期満了に伴う名護市長選は23日投開票され、現職の渡具知武豊氏(60)が新人で元市議の岸本洋平氏(49)を破って再選を決めた。選挙戦は渡具知氏に政権与党の自公が、岸本氏には玉城デニー知事が率いる「オール沖縄」がそれぞれ支援に回り、一騎打ちの構図となった。沖縄の「選挙イヤー」の初戦と位置付けられた今回の重要選挙は自公に軍配が上がり、秋の知事選に向けて弾みをつけた。

コロナ下、投票率は過去最低

 名護市長選の結果は以下の通り。  

 渡具知武豊 19,524票  
 岸本洋平  14,439票  
 無効票     172票

 当日有権者数は49,959人で、投票率は68.32%と過去最低だった。

 与野党幹部や知名度を誇る国会議員が入り乱れるように名護市入りした前回2018年の市長選とは打って変わり、今回は新型コロナウイルスの拡大が続き、両陣営とも外部からの応援に頼れなかった。1996年に普天間飛行場の代替施設建設問題が浮上して以降7回目となる市長選は、「一番盛り上がりがなく、静かな選挙」(ある陣営関係者)となり、その分、地元の〝自力〟が試された。

暮らし向上か、基地反対か

 両候補の訴えから選挙戦を振り返ると、争点として問われたのは辺野古に対する政治姿勢と、子育てをはじめとする生活支援策にどう取り組むのか、という2点に集約されるだろう。

 渡具知氏は市長として取り組んだ子育て無償化三点セット(保育料、給食費、医療費)を中心に実績を強調。暮らし向上を重要争点に位置付けた。米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設計画については、国と県が係争中として「推移を見守る」との立場を取った。

 他方、岸本氏は辺野古移設に反対する立場を打ち出し、国に対して「言うべきことを言う市政」を掲げて渡具知氏との対立軸とした。渡具知氏が取り組んだ子育て無償化政策には継続するとしつつ、その財源となっている米軍再編交付金に頼らない街づくりを訴えた。

 子育て無償化には年間7億1000万円の予算が必要になる。渡具知氏は選挙戦で、三つの無償化は「財源の大きさから、どの市町村でもできなかった事業」だと胸を張った。岸本氏はこれを継続する上で、辺野古移設の見返りとして国から与えられる米軍再編交付金ではなく、市有地売却やふるさと納税の充実などでまかなう考えを示していたが、財源確保の具体策としてあいまいさが伴った。結果、渡具知氏からの「財源の根拠がコロコロ変わる」との批判をかわせなかった。

 一方、岸本氏を支援した玉城デニー知事は告示後、名護に4度応援に入り、マイクを握った。年末年始に沖縄県内で拡大したオミクロン株が米軍基地由来との見方を提示し、その上で辺野古移設に反対する岸本氏への結集を呼び掛けた。岸本陣営は米軍基地内のコロナ感染への対応を争点化しつつ、辺野古反対の訴えの浸透を図ったものの、結果を見る限り、奏功しなかった。ことあるごとに選挙戦を左右してきた「米軍ファクター」の影響は、今回のオミクロン株に関しては限定的だった。

オール沖縄に痛手 自民は反転攻勢

 この4年間で、辺野古移設は土砂投入の工程に入った。県と政府の対立が続く中で、今回の市長選の報道機関の世論調査では、辺野古移設を争点として重視する割合や、移設に「反対」と答える割合が4年前から低下しているものもある。辺野古問題を取り巻く名護市の環境には、少しずつだが変化が見てとれる。

 名護市長選の結果を受けて、自民は夏の参院選、知事選の候補者選考を加速させる。3月の自民党大会までに候補を決定する方針で、名護と同日の南城市長選での勝利は、自民の県政奪還に向けた反転攻勢の足がかりとなった。一方、オール沖縄を率いる玉城デニー知事への打撃は大きく、求心力への影響も避けられない。どう体制を立て直すかが注目される。

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