宜野座の春キャベツ最盛期、「特定技能」の来日ベトナム人活躍
- 2021/4/4
- 社会
宜野座村で春キャベツの収穫が最盛期を迎えている。家族でキャベツ栽培をしている新里さんの畑では、朝早くからひとつひとつ手作業で丁寧に収穫作業が行われる。作業には、2019年4月に施行された新たな在留資格「特定技能」を持った4人のベトナム人就労者も即戦力として活躍。春キャベツは、週におよそ約15000個、重さにして20トンを那覇の青果市場へ出荷し、県内のスーパーなどで販売される予定だ。「特定技能」外国人を受け入れた背景、働く様子など現場の声を聞いた。
25カ所の畑を所有、キャベツは15品種
新里さん家族は、25カ所の畑を所有し、減農薬栽培でキャベツとゴーヤーを生産している。キャベツだけでも15品種を作っているという珍しい農家で、県内でこれほどの種類のキャベツを栽培しているのは新里さんしかいないという。多品種を作るのは、畑の土によって栽培に適した品種を選んで育てているからだ。
人手不足に悩む農家にとって即戦力となる
外国人の受け入れには大きく分けて「技能実習(途上国への技術移転による国際貢献)」と「特定技能(人手不足による就労目的)」の2つがある。特定技能は、日本の少子高齢化に伴う労働者不足を解消するため、製造業や建築業、介護、農業など14業種で外国人が働くことができるようにした資格のこと。
少子高齢化が進む沖縄でも、分野によっては外国人材なしで経営が成り立たない企業も多い。
新里さんの農家に特定技能のベトナム人就労者の4人が来たのは昨年。種まきから収穫まで作業全般の業務に従事している。特に葉物野菜の収穫は手作業で行われており、繁忙期における労働者の人手不足に悩む農家にとって即戦力となっている。
「特定技能」のベトナム人を受け入れたきっかけ
新里さんが特定技能就労者を受け入れるきっかけとなったのは、2019年に県外研修に参加した際に出会ったミャンマーからの「技能実習生」の働きぶりに触れたことだった。「日本語は少ししかできないけれど、見る、真似る、動く、予測する、頑張る。習うときの眼が綺麗。これは基本的だけど難しいこと。日本人にはない必死さがあって、家族を背負ってる責任感が滲み出ていた」と出会った時の印象を振り返った。
高い労働意欲、真面目、一生懸命
出入国在留管理庁によると、国・地域別の特定技能外国人数はベトナム人が全体の6割を占め、次いで中国、インドネシアである。東南アジアの国々の中でも、ベトナムの人々は家族思いで「家族を助け、守るために豊かになりたい」というエネルギーが強く、高い向上心と労働意欲を持っている傾向が強いといわれている。
新里さんは、実際に受け入れをしてみてこう感じている。「性格はそれぞれだが、共通しているのは、真面目さ。中には、日本語をちゃんと覚えて話そうとする人もいる。来日して3か月ほどで、ベテラン並に成長する速さ、見て覚える真面目さがある。仕事量は日本人の1.5倍以上で、とにかく一生懸命です」と4人に感謝する。
「ジャーニーマン」化する特定技能者
新里さんの農家では、今後10年間は特定技能者を受け入れをしていく考えだという。その中で困っていることはないですかと問うと、「外国人の仕事が早すぎて、日本人のアルバイトがついていけずに長続きしないところ。そして、特定技能者の転職」と挙げた。
技能実習は、受け入れ企業での技術や知識の習得が目的のため、転職という概念が存在しないが、特定技能者は、転職が可能。新里さんの農家で働く特定技能者も今年6月に会社移籍をするようだ。「特定技能者は(各地を渡り歩く)ジャーニーマン化してるので、稼げるところじゃないと、すぐ働き先を変える。日本国内での連絡網がかなり発達しているので、条件がいいところに流れていきます」と話す。
少子高齢化が進む沖縄で大きな力に
「特定技能」制度が開始されて早2年。出入国在留管理庁が発表した数値によると、沖縄に在留している特定技能者は2020年12月末時点で167人いる。少子高齢化が加速し、生産労働人口が減少していく中で、今後更に増加していくと見込まれる外国人労働者は、国内産業の人材として即戦力となるだろう。