「風船かな?」沖縄でも昨年4月に球体の目撃情報 中国の偵察気球か
- 2023/2/10
- 社会
偵察目的とされる中国の気球を米軍が撃墜した件に関連し、日本国内でも各地で似たような物体の目撃情報が報告される中、沖縄県内でも昨年4月28日に本島南部の近隣離島である座間味島付近の上空で白い球体が目撃されていたことが分かった。沖縄気象台によると、同日に「上空に白い物体が浮いている」などの連絡や問い合わせが数件あったという。気象台は取材に対し「気象台のものではない」と回答しており、中国の気球である可能性もある。
20~30分観察 上空で浮いたまま動かず
目撃者の1人は、那覇市から西に約40km離れた座間味島でツアーガイドをする佐野裕二さん。昨年4月28日は午前9時ごろから友人と2人で島の北側沖に船を出し、ルアーを海中に垂らして移動しながらカジキを釣る「トローリング」をしていた。この日は快晴に恵まれ、ほぼ無風で海面も穏やかな「べた凪」だったという。
「あれ何だろうね?」。海上にいる時、座間味島側の南の空に白い球体を発見したのは午前10時半ごろ。「島の方面の上空に白い点くらいのものが見えました。晴れて空に雲がなかったこともあり、丸い物だということは目視で分かりました。星よりは少し大きかったです」。遠かったせいもあるのか、じっと観察しても動いている様子は確認できなかった。「風船かな?」「まだあるね」と船上で話をしたり、球体の写真を撮ったりしながら20~30分ほど気に掛けていた。
そうこうする内にカジキがルアーに掛かって再び釣りに集中し始め、その後は球体の事は頭から自然と消えていったため、上空にどのくらいの時間浮いていたのかや、どの方面に移動していったのかは分からないという。同様な白い球体が空に浮いているのを見た経験はこの日以外には無いという佐野さん。最近の中国の気球に関連するニュースを見て「あれだ」と直感し、改めて写真を確認して地元新聞社に情報提供した。
目撃したものが仮に中国の気球であれば、米国で撃墜されたものは米軍の分析で高さ約60mにおよぶ大きさで、重さ900kg以上の機器を搭載していたとされる。それを念頭に、佐野さんは「あれが偵察目的の気球だった場合、何か物体を落とされでもしたらやっぱり怖いですよね。軍用機であれば自衛隊も対応するでしょうけど、気球であればすり抜けられると分かったらまた来てしまうかもしれないですし」と不安を口にした。
「気象台のものではない」
沖縄気象台によると、佐野さんが白い球体を目撃した同じ昨年4月28日の午前中、「上空に白い物体が浮かんでいる」などの連絡や問い合わせが数件寄せられた。どの地域から連絡がきたかは特定できていないというが、佐野さんは「気象台には連絡していない」と話したため、座間味島以外の地域からも目撃された可能性がある。
気象台では石垣島と南大東島で1日に2回、気温や湿度、風向き、風速などを観測するために「ラジオゾンデ」という観測器をゴム気球に吊るして上空に上げているが、佐野さんらが目撃した白い球体は「気象台のものではない」という。
中国の気球を巡っては、今月4日に米国本土を横断した気球を米軍の戦闘機がサウスカロライナ州沖合上空で撃墜。米国は分析の結果、情報収集能力を保有する機器を搭載していたと公表したが、中国は気象観測を目的とした民間気球と主張している。日本国内でも2020年6月と21年9月に東北地方で、22年1月には九州西方の公海上空で似たような気球が目撃されていることが明らかになっている。