「沖縄の子こそ東大を目指すべき」元灘校教師キムタツさん

 

 国内有数の進学校、灘中学校・高等学校(兵庫県)の元英語教員で「夢をかなえる英単語ユメタン」シリーズや「東大英語基礎力マスター」シリーズなど数多くの有名参考書を手掛けている作家の木村達哉さんが、沖縄の芸能事務所「オリジン・コーポレーション」に入所し、沖縄での活動の幅を広げている。

 数多くの生徒たちを東大などの難関大合格に導いてきた木村さん。前編ではオリジン・コーポレーションに入所した経緯や理由などに触れたが、今回の後編では「なぜ東大に入るべきなのか」を聞く。「沖縄の子こそ東大を目指すべきだ」と強調する木村さんが語る真意とは。

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前編:東大合格請負人の灘高元教員が沖縄の芸能事務所に所属する理由|HUB沖縄

東京大学赤門

沖縄の公務員志望者がダントツで多い理由

 沖縄の子は、公務員を志望する人が「全国一、ダントツで多い」(木村さん)という。「理由は簡単ですよ。民間企業の給与が安いからです」

 2020年の都道府県行政職員の試験倍率は、全国的には軒並み4倍前後なのに対し、沖縄県は13.2倍と際立って高い。年によっては20倍を超える場合まである。

 「『給料が良いから』という理由で公務員が志望されますが、沖縄の公務員の給与は47都道府県中47位です。それでも『給与が良い』とされているということは、民間の給与が低すぎるということです。他県の場合は、給与面ではなく『潰れることはないから』『やりたい仕事ができるから』といった理由で志望する子が多いです」

沖縄県庁

 全体の所得底上げのためには、民間の給与増が解決の道筋だと木村さんは言う。

 「民間の給与を上げるためには、結局沖縄県外から企業を入れることになります。県外企業が県外水準の待遇を用意して沖縄に来ると、学生の人気が県外企業に集中します。そうなると沖縄の企業も自社待遇を上げざるを得なくなります。地元企業を大切にしたいという沖縄の人の思いもあるはずですが、人々の暮らしという視点でいえばその方が良いことは確かです」

基地問題タブー視せず「学校でこそ議論を」

 全国各地を講演などで回る木村さんは、米軍普天間飛行場の移設予定先となっている沖縄県名護市の県立名護高校にも、2019年2月に訪れていた。

「その時は基地問題についても話しました。その時に『今沖縄の学校で基地問題について話すのは木村さんだけです』と言われたんです。学校で基地問題のことを少しでも話そうものなら、学校の電話がずっと鳴り続けるみたいなんですね。いわゆる右からも左からも」

埋め立て工事が進む名護市辺野古の沿岸(写真ACより)

 このことを受けて、木村さんは学校が果たすべき役割を、このように話す。

基地問題をどうやって解決するのかと考えることを学校でしなかったら、いつどこで誰が解決するのよ、という話になります。学校でやらないといけません。今の大人が解決できていない問題は、今の子どもたちが大人になった時に解決できるようにしなければなりません。そういうことこそ、学校で言い続けるべきです」

 木村さんは、沖縄で「NPOおきなわ学びのネットワーク」、福島で「NPOふくしま学びのネットワーク」のメンバーとして、高校生向けの無料セミナーや学習合宿などの活動にも取り組んでいる。

「米軍基地の問題は、沖縄県知事だけの力で解決することはあり得ません。名護高校でも話したのですが、一番の近道は『この中の誰かが総理大臣になったら一気に解決に近づく』ということです。だから勉強をする必要がある。沖縄だと基地問題があり、福島だと原発問題がありますよね。そういう県の子どもたちこそ勉強して、影響力のある政治家になるべきです

官僚の輩出が少ない沖縄

 「霞が関って、沖縄出身の官僚がほとんどいないんですよ」と木村さん。「東大に行く子が非常に少ないためです。例えば兵庫や奈良は、強力な政治家がいるだけでなく、東大に行って官僚になる子も多い。だからそういった地域はそれなりに潤っています。阪神淡路大震災の時にも兵庫は驚異的なスピードで復興を果たしました」

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