琉球新報社、二期連続の大幅赤字 タイムス社と明暗分かれる
- 2021/7/7
- 経済
6月24日の株主総会で琉球新報社(玻名城泰山社長)の決算が報告された。それによると、2021年3月期の売上高66億300万円に対し、経常損益が4億5100万円の赤字となった。20年3月期の経常損益も3億2200万円の赤字であり、二期連続での大幅赤字である。
ここ4年間の経常損益を見ると、18年3月期には4億5200万円の黒字を確保していたが、19年3月期には黒字が6700万円まで減り、20年3月期に3億2200万円の赤字、そして21年3月期に4億5100万円の赤字と、経営状態は悪化の一途を辿っている。
この状況のなか、琉球新報社は昨年、役員報酬や管理職手当の削減に踏み切ったばかりか、社員のボーナスも夏に3割、冬には5割もカットし、聖域なき経費削減を掲げて残業代や旅費、交通費、そして交際費に至るまで大幅に圧縮。さらに早期希望退職まで募り、6人がこれに応じたという。この早期希望退職に応じた社員を含め、昨年度は16人が退職した。
これらの経費削減で、営業費用を大幅に圧縮したものの、コロナ禍の影響などにより、広告の売上がそれを上回る勢いで急減し、21年3月期の売上高は前期より2割近くも落ち込んだ。
6月24日の株主総会では、1億9232万円あまりの資本金を1億円に減資する議案が出され、了承された。言うまでもなく、税負担を軽くするためである。
保有する不動産の処分進める
琉球新報社では、保有する不動産の処分を進めており、昨年には保有していた駐車場用地を売却した。この他にも、関係者によると、那覇市天久の旧本社ビルや西原町に保有する土地の売却に向けた交渉も進めているが、このうち西原町の土地については暗礁に乗り上げているという。
琉球新報社は18年5月に現在の那覇市泉崎の本社に移転した。新本社は市役所前の一等地とはいえ、三角形のやや狭い土地に建ち、しかも、市民向けのギャラリーや606席もの規模のホールを抱えることもあってテナントを入れずにきた。
だが、今年5月末からはメインバンクの沖縄銀行の関連会社が入居し、自社事業のチケットなどを販売する読者サービス室があった1階には、昼食用の弁当を販売する店が入居した。
それによって、社内ではそれまであった部署が玉突きでビル内移転を強いられ、「男子休憩室が召し上げられた」「狭い所に押し込められて3密の状態になりかねない」(琉球新報社関係者)という。
活字離れが進むなかで、全国で新聞社の経営は軒並み厳しく、不動産事業に力を入れるのが今やトレンド。朝日新聞社は東京・有楽町のマリオンや大阪・中之島のツインタワーを保有することで知られるが、20年3月期は不動産事業だけで売上高385億円、利益は68億円に上るという。これによって本業の低迷を支えている。
ただし、こうした経営ができるのは優良な不動産を持つ大手紙だからこそ。地方紙の置かれている状況の厳しさは言うまでもない。
沖縄タイムス社は減収増益
琉球新報社では、なんとか収入源を絞り出そうと、ウェブ広告による収入や記事やデータベースの販売を当て込んで、昨年11月にデジタル推進局を社内に立ち上げた。これまで宅配で新聞を取っていた読者には無料でネット上の記事が読めるプランなどをスタートし、顧客数を10倍以上に増やしたとするが、デジタル事業では先行する沖縄タイムス社に後塵を拝する状態が続き、経営を支えるだけの収益を上げるようになるのはまだ先のことだ。
なお、ライバルの沖縄タイムス社は、21年3月期の決算で琉球新報社と同様に広告の売上が減少しながらも、経費削減により経常損益では1億8300万円の黒字を確保し、減収増益となった。