沖縄初タラソエステの波乱万丈 (株)リポースカンパニー粟國代表

 

 自社サロンに導入して約2ヶ月、口コミで評判となり県内大手リゾートホテルから声がかかった。ホテルサロンの客単価は5,000円、売上600万円と聞き、すでにお店の客単価が1万円を超えていた粟國さんは勝算があると思った。「私なら、売上げを600万円から1,000万円にできます」と独自プランを提案した。「30年の会社経営で、私から新提案を書き営業したのはこの1つだけ」と語る。

 6/17に、リゾートホテル内のビーチサイドにタラソテラピーサロンを開業。2週間で約170万円、翌月には670万円を売上げ、約束通りの1,000万円もすぐに達成した。市場の需要を確信した。

 余暇で体のケアをするという習慣を、日本でも浸透させたいと思っている。「(体のケアをする)ヨーロッパの余暇の楽しみ方が好き。タラソは体にエネルギーをチャージする」と魅力を語る。

事業の赤字、人を信じて裏切られる経験を糧に奮起

 全て順風満帆だったわけではない。化粧品開発・販売の自社事業を東京で新たに発足した時は、1億5千万円の損失が出た上に従業員の横領も発覚。1年で事業を縮小した。それでも「輸入の仕事を覚えることができたから良い授業料。考え方だと思っている」と言い切り〝損して得を取る〟とプラスの経験に変えている。

 創立20周年にパートナーを病気で失くし、その後も度重なる困難を乗り越えてきた。

コロナ禍を生き抜いた秘訣は「人を大切にすること」

 粟國代表の信念は「人件費は削らない」ということだ。「借りてでもボーナスを出そう」と常に社員に心を寄せる。コロナ禍で気づいたことは、社員の年収が下がると売上も下がること。「現場を退き、自分自身はいつしかお金のために働かなくなっていた。でも社員にとって年収は大切。〝ちゃんとした会社にいる〟という意識付けにもなる」。自身は生命保険や証券を全て解約し会社に充てた。不良在庫の処分など経費を見直し現金を確保した。

 ノウハウも技術も人に身に付く以上、人を大切にする経営を貫いてきた。その証拠に「社員の半数は勤続10年以上」と誇らしげに話す。社員一丸となって働き、コロナの休業明けには売上が2倍に上った。

数字を作る面白さを伝えたい。人材育成が次の目標

 2021年の目標は〝人材育成〟。「大人の仕事とは、結果を出すこと。『仕事が続く=結果につながること』を知っている。続けた人にしか分からないことがある。数字を作る面白さを伝えたい」と意気込んでいる。

 商品知識や販売促進など基礎から教育し、3年後には化粧品事業の売上げ1億円を目指す。若い世代に期待を込めて「仕事と給料どちらが大切か考える前に、まずは仕事を確実に覚えてほしい」と感じている。

 一朝一夕で身に付かない技術職だからこそ、「教えてもらえることが当たり前と思ってほしくない。相手は教えるために貴重な時間を割いている」と、仕事を教わる側の姿勢にもこだわる。今年は育成マニュアルに予算をかけ、儲かる仕組み作りにも注力している。「全体の社員育成とは別に、経営ができる人をどう育てるか」。創業者の自分自身に問いかけている。

 創業30年の節目に焦点を当てたのは〝人〟。

 会社の経営に奔走していた10年目、パートナーと死別した20年目。今まで1度も周年祝を開く余裕がなかった。「今年は社員みんなで、ささやかでも30周年のパーティーを開きたい」。社史をかみしめて、笑顔を見せた。

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