ボクシング福永、コロナ陽性から再起 ライバルのエール胸に
- 2021/3/16
- エンタメ・スポーツ
新型コロナの影響でタイトルをかけた決戦のリングにすら上がれなかったプロボクサーがいる。HUB沖縄2月17日付の記事で紹介した22歳の若武者、福永輝(ふくなが ひかる)。失意から再起をかけて始動できたのはライバルからのエールがきっかけだった。
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強打のホープを襲ったのは
北谷町出身で地元のボクシングジム「沖縄ワールドリング」に所属する福永は身長163cm、フェザー級(57.15kg以下)のボクサーでプロ通算8勝5KO1敗。今年2月21日に東京で行われた全日本新人王決定戦出場をかけたトーナメントを勝ち上がり、西軍(西日本)代表権を獲得。東軍代表選手と戦い新人王のタイトルを勝ち取る、はずだった。
しかし試合2日前の2月19日、上京し日本ボクシングコミッションによるPCR検査を受けた結果が、まさかの陽性だった。キャリアアップのための大切な試合前、新型コロナ感染防止に気を使い過ぎることはないと十分に対策したつもりだった。
「減量のせいにはしたくないですが、免疫力が落ち切っていたということはあったと思います。検査翌日の計量までもう一絞りだったのですが、気持ちの面でメンタルが崩れていました。いろいろ考えすぎてパニックになってしまい、棄権を決めました」
再起を促すエールの相手は
再検査して陰性であれば試合ができる可能性もあったが、リングで戦うどころではなかった。同行し、検査は陰性だったジムの中真光石(なかま こうせき)会長に棄権の意志を伝えた。会長も「放心状態だった」と語ったが、東京の保健所に連絡し、隔離療養のためのホテルを紹介されるまでに、寒空の中を数時間一緒に待った。検査で陽性の出た福永に室内で待つことは許されなかったからだ。コロナ禍で医療体制がひっ迫する東京を体感した。
無念の棄権を知った沖縄やボクシングの仲間からは励ましのメッセージが福永の携帯電話に届いた。その中でも、特に心を揺さぶられたのは、プロキャリア唯一の黒星を喫した相手、前田稔輝(まえだ じんき)から来たSNSを通じてのエールだ。
”起こること全てに意味があると思って、また前を向いて頑張ろう。またさらなる高みの舞台で戦いたいと思っている”。拳を交えたからこそのリスペクトと奮起を促すメッセージは、福永の胸を打った。
「試合で格の違いを見せられた前田(選手)からのメッセージでした。別に新人王になるためではなくて、世界チャンピオンになるためにずっとやっているので、通過点でしかないと思えました。止まっていられないというか落ち込んでいられないなと、すぐ(隔離療養の)ホテルの中でトレーニングを始めました」
すでに次戦オファーが届く
今月4日に東京での療養を終えて帰沖した後は、徐々に練習の強度を上げている。新人王はならずも、強打のファイターとして名を知られつつある福永のもとにはすでに次戦のオファーが届いている。
「新人王になれなかったのは悔しいけど、(次戦)勝って一気にもう今年、来年には日本タイトルマッチをできる位置に行って、すぐ日本チャンピオンになって世界に行けるようにやっていきたいです」
この借りは拳で返す。失意から立ち上がった男の目にはすでに闘志が宿っている。