コロナ禍でも下地島空港が強気の理由 アフターコロナを見据えた動きはもう始まっている
- 2021/1/13
- 経済
観光客激減でも気を吐く下地島空港
19年3月に開業した下地島空港ターミナルビルは、そんな宮古島の好景気の象徴とされた。それだけに、コロナ禍による空港の先行きは、島の観光そのものの行方を左右するとも言われている。
では、下地島空港はいま、どうなっているのか。ターミナルビルを運営する下地島エアポートマネジメントの伴野賢太郎社長を訪ねると、意外にも表情は明るい。
「もちろんコロナ禍の影響は大きく受けていて、いまは手元資金の確保に全力を注いでいる状況です。それでも中長期的な島の先行きについては、まったく悲観していない」
その背景には、数字の実績がある。20年12月25日に大阪航空局が発表した下地島空港の11月の旅客実績(速報値)は、2万0196人と、前年同月(9899人)の2倍以上となった。那覇空港、新石垣空港、そして宮古空港の実績が前年同月比で軒並み減少している一方、下地島は健闘した。
GoToトラベルが始まった7月から11月の累計でも、下地島空港の旅客は去年より1万人ほど増え7万0814人だった。もちろん、10月25日にスカイマークが下地島―羽田(1往復)、下地島―神戸(1往復)、下地島―那覇線(2往復・現在は1往復運休)の3路線を一気に開設したことが大きい。
全便がそろったことのない空港
だが、伴野社長の言葉通り、コロナ禍での経営は、苦難の連続だった。19年3月にターミナルが開業し、LCC(格安航空会社)のジェットスターが成田―下地島線に就航。7月には同社の関西―下地島線、香港エクスプレスの香港―下地島線も開設された。
ところが、19年12月にはジェットスターが関西―下地島線を早々に運休(3月末から再開)、コロナ禍で香港エクスプレスも20年2月から運休となった。開業初年度で12万6000人の旅客実績を記録した朗報もつかの間、4月にはジェットスターが成田―下地島、関空―下地島の運休を決め、ターミナルビルは休業に追い込まれた。
6月のジェットスター便の再開とともにターミナルの営業も再開したが、需要の低迷を理由にジェットスターは10月で再び運休し、代わってスカイマークが3路線4往復を就航させた。結局、いま空港に飛んで来るのは、スカイマークの3路線3往復だけになっている。
「国交省の申請ベースでは、7便(往復)が下地島空港に飛んでいることになっていますが、開業して以来、それがすべて揃ったことが一度もない」と判野社長は苦笑する。「20年度は19年度並みの実績に届くか微妙な状況」だという。
海外からのインバウンド客は「数年は回復しない」と言われ、「21年度30万人、25年度57万人」は微妙なところだろう。
それでも、スカイマークの佐山展生会長は、「日本から海外に行きたい人は、じっとしているというより国内でも行く。その中でも南の嗜好の方、ハワイなどに行っていた人は沖縄に行く。それで一回下地島に行かれたらもう『ハワイではなく下地島』となる」と話し、「下地島は数少ない成長余力のある空港」とする。
確かにコロナ禍で宮古島の入域観光客は激減しているが、これはクルーズ船の来港がゼロになったことが大きく、航空機での入域の減少は実はそう大きくはない。緊急事態の再発出で状況はさらに厳しくなったものの、”下地島ブルー”の海を擁する下地島そのものの魅力、観光産業の潜在力自体は、コロナで損なわれるものではない。