県議選の争点はどこにあるのか
- 2020/5/16
- 政治
6月7日投票の沖縄県議会選挙まで3週間ほどとなった。焦点は、玉城デニー県政の与党である共産や社民や共産、社大などの「オール沖縄」勢力が過半数を維持するのか、それとも県政野党である自民が、中立の公明党などを取り込んで過半数を奪うのか、にある。
沖縄県議会の定数48(現在は欠員が2)。改選前の県政与党は合計26人で過半数を握る。一方、県政野党の自民は14人。これに中立の公明が4人、旧維新2人(2月に維新を離党し無所属の会という新会派を立ち上げ)である。自民と中立の公明や旧維新を足しても20しかなく、5議席も増やさなくては過半数に到達できない計算になる。
今回の県議選の争点はなにか。やはり新型コロナウイルスへの対応に県民の関心が集まっているはずだ。感染の拡大こそ収まり、今月14日に緊急事態宣言が解除されたが、沖縄の経済はどん底まで冷え込んでしまった。国の出先である沖縄総合事務局は、4月27日に発表した管内経済情勢報告で「新型コロナウイルス感染症の影響により、経済活動が抑制され、足下では観光で悪化がみられるなど、極めて厳しい状況にある」との総括判断している。
個人消費が弱含んでいるのに加え、県経済の柱である観光も悪化し、有効求人倍率も低下してきている。県内企業の57%で売り上げが減少しており、運輸・サービス業にいたっては90%もの企業が減少している状況だ。
玉城県政の経済対策に「遅い」の声
経済対策をめぐる玉城デニー知事の対応には、経済界を中心に「遅い」との声が上がっている。政府が緊急事態宣言を全国に拡大することを決めたのは、4月16日。翌日、玉城知事は記者会見を開いたが、休業要請を県内の各企業にするか明言をせず、休業要請の対象業種や協力金について具体的に明らかにしたのは、22日までずれ込んだ。企業からは「県が早く方針を示して欲しい」との声が多く上がり、地元紙も「判断が遅い」との関係者の声を伝えており、もはや待ったなしの状況だ。
危機管理のあり方は重要な争点である。たとえ新規感染者の数こそゼロの日が続き、拡大傾向が下火になりつつあるとしても、「極めて厳しい状況にある」とまで判断された県経済をどうやって建て直すのか、この点も関心が集まるところだ。
県政与党の各党派は、これまでの選挙と同じく、基地問題、とりわけ米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設の是非について争点としたい構えだ。4月21日には防衛省が埋め立て地域の軟弱地盤の改良工事のため、設計変更を県に申請したばかりである。ただ、感染拡大によって県経済が大打撃を被っているなかで、今回ばかりは基地問題を争点の中心に据えるのは難しいとの見方がある。
また、感染拡大による影響とは別に、県民の間で基地問題への関心が薄れてきているとの指摘もある。県が3〜5年ごとに実施してきた県民意識調査の最新版(昨年3月公表)では、県が重点的に取り組むべき施策として、これまで調査のたびにトップだった「米軍基地問題の解決促進」が2番目に下がり、新たに最も取り組むべきとされたのは、「子どもの貧困対策の推進」だ。
今回の新型コロナウイルスによる影響が直接的に現れる課題でもある。
一括交付金は6年間で2670億円の減
県政野党の自民は、一括交付金など予算が大幅に減額されたことを玉城県政の失政として追及している。辺野古への移設問題について国と協調姿勢を取っていた仲井眞県政の最後の年にあたる2014年度に1758億円あった一括交付金は、今年度予算で1014億円にまで減額した。
この6年間で減額された一括交付金をすべて足し上げると2670億円に上っており、一括交付金の減額によって、市町村の中には道路や公園の整備などの事業が中止となったところもあることから、暮らしに直結する影響が出ていると自民は強調する。
その他にも、昨年10月の火災で焼失した首里城をどう再建し、さらに今後の観光にどうつなげていくか、といった点も県民の関心が高いのではないか。首里城は貴重な文化財であると同時に県内で最大の観光資源でもあった。
政府は6年後までに正殿の再建を目指すとしているが、それまでの間は新型コロナウイルスの感染が収束したとしても、観光客が首里から遠のくことは避けられない。どうやって首里城周辺の賑わいを取り戻すのか。
また、県警や那覇市消防本部の調査では、火災原因が分からなかったとのことだが、原因が分からなくては再発防止策を練りようがないのではないか。
本島北部の住民にとっては、北部基幹病院の整備計画も大きな関心事のはずだ。県立北部病院と北部地区医師会病院を統合して新たな基幹病院を設置するこの計画は、遅々として進まない。
昨年秋の県議会で取り上げられた、知事が業者と不適切な会食を行ったとされる問題も、野党の追及が不十分だったこともあって消化不良感が残る。知事は私的な会食だから問題ないとの姿勢を貫いたが、契約前日の会食に、与党からも反省を求められるなど波紋を残した。李下に冠を正さずという言葉もある。
新型コロナウイルスの感染拡大は、選挙戦のあり方をすっかり変えてしまった。集会を開くわけにいかず、支持者回りをするわけにもいかない。SNSを使っての有権者とのやりとりが中心になっており、知名度が低い新人候補は不利だと見られている。
そんな中で驚いたのは、公明が4月30日に公認予定の4人のうち2人の公認を取り消したこと。感染拡大を受けて公明はかねてから県議選の延期を訴えていた。この状況では支持母体の創価学会による大規模な選挙運動も難しく、「苦渋の決断」だという。
緊急事態宣言が解除されるタイミング次第だが、投票率の大幅な落ち込みも予想される。これまでにない異例の選挙となることは避けられない。