【検証・玉城県政②】基地問題 辺野古移設をめぐる9件の訴訟で勝訴ないまま

 

 これまで埋立の承認をめぐり計9件の訴訟が起こされたことになるが、和解を含め県はひとつも勝訴していない。とりわけ前述の工事差止訴訟は埋立承認そのものの適法性、有効性が争われたもので、ここで県が敗訴したことが、その後の計画推進を決定づけたといえる。

勝てる見通しのない争い

 翁長知事の死去により後継として知事の座に就いた玉城デニー知事は、訴訟についても「辺野古移設工事は違法で中止すべきだ」という姿勢を崩しておらず、沖縄防衛局が2020年4月に申請した、埋め立て地の北側にあたる大浦湾の軟弱地盤を含む区域の設計変更申請を却下したが、今年7月に国地方係争処理委員会で「却下は無効」と判断された。

 これに対し、玉城知事は新たに裁判で却下の違法を訴える方針だが、県は今後も勝てる見通しのない争いを継続することになる。

 玉城知事は基地問題について、訴訟と並行して政府と県の真摯な対話の場を実現させるとしている。そのために求めているのが、SACOWA(日米政府による沖縄に関する特別行動委員会に沖縄を参加させる)の枠組だ。「話せば分かる」との姿勢には、被害者である沖縄の声を日米両政府が無視しているという基本認識があり、これはオール沖縄を構成する各党派の主張をふまえたものだ。

 翁長知事は「左翼から右翼までウイングを大きく拡げ、沖縄の基地問題に対応する」と語っていたといわれるが、玉城県政になってからは、左派の影響力が大くなり、保守の部分は見る影もなくなったといえるだろう。

 翁長知事時代、東村高江で北部訓練場の着陸帯を建設するにあたり、安慶田副知事が警備体制について政府と交渉するなど水面下のやり取りを担ったといわれている。翁長知事はいずれ辺野古やむなしに転換する意向ではなかったか、と指摘する政府与党関係者もいる。玉城知事にはそのような「歌舞伎」を演じる戦略はなさそうだ。辺野古反対を主張し続けることが有権者に対する最高のアピールだと考えているのだろう。

 しかし、知事選がどのような結果に終わっても、辺野古移設が計画どおり進むことに政府関係者は全く不安を感じておらず、知事の訴えは空回りするばかりであろう。

 昨年5月には、沖縄に全国の米軍専用施設の70%が集中しているのは過重負担だとして、50%以下にするよう当時の菅義偉首相に求めたが、どのように50%以下にするのか具体策に乏しく、政府からの反応もないままに終わった。

嘉手納基地 沖縄ニュースネット
米軍嘉手納基地

普天間の危険性除去こそ問題の原点

 宜野湾市長を2期務め知事選への再出馬を表明している佐喜真淳氏は、翁長・玉城「オール沖縄」県政のこのような対応を厳しく批判している。辺野古の埋立に反対するあまり、肝心の「普天間飛行場の危険性除去」という、本来の目的を見失っているではないかという主張だ。

 佐喜真氏は2018年の知事選に「普天間飛行場の一日も早い危険性除去」を公約として出馬した。結果は翁長知事の弔い合戦となったこともあり、玉城知事に大差を付けられて落選したが、約31万票を得て、少なからぬ県民が政府の計画に理解を示していることが明らかになったとする。

 このときの選挙で佐喜真氏は、「辺野古移設容認」との立場を明確には打ち出していない。普天間飛行場は早く返還すべきだが、その移設先を県内とすることに保守層の一部にも批判があったからだ。選挙に際して県外移設を求めるべきだ、との声を無視できないとの判断だったのだろう。

 今回、佐喜真氏は辺野古移設の容認を打ち出すものと見られる。背景には松川正則現宜野湾市長や島尻あい子衆議院議員が「辺野古やむなし」を明言して当選したことがあるものと思われる。訴訟に明け暮れ、普天間飛行場の日常を黙認しているかに見える現県政への批判が県民に広がっているとの読みだ。

訴訟が続けば、危険性放置につながる恐れ

 日米両政府が合意した嘉手納以南の移設計画の遅れについても、玉城知事が両政府の不作為を強く批判するのに対し、佐喜真氏は、現県政が辺野古移設反対にこだわるあまり、政府との現実的な話し合いが行われていないことを指摘する。訴訟を次々と重ねることで、計画は遅延し、それだけ普天間飛行場の危険性が放置されることになるというのだ。

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