キムタツコラム⑦中日ドラゴンズと宮城大弥から考える組織論

 

 今年の中日は昨年までの監督が解任となり、新監督が就任しました。オープン戦での立浪監督は、二軍で1試合活躍しただけの選手をどんどん一軍の試合で起用していました。辛抱して使われていたのは若い選手たちで、そうじゃない選手はどんどん入れ替えられていました。控えの選手たちはどう思ったでしょう。今年は努力すれば一軍の試合に出ることができるぞと、僕が選手なら考えたことでしょう。

高校生が開幕スタメン

 この原稿を書いている間に楽天とロッテの開幕戦が始まりました。スタメンを見て驚きました。なんとロッテのキャッチャーは高校生の松川君です。彼はプロ野球選手とはいえ、3月31日までは市立和歌山高校の3年生なのです。また、楽天のキャッチャーは、これまた新人の安田君です。いずれも昨秋のドラフト会議で指名されたばかりの選手です。

 ここで確実に言えるのは、両チームの他のキャッチャーたちがこのままではまずいと思っているはずだということです。新人が開幕戦に出場し、しかも扇の要であるキャッチャーなんですよ。そりゃ通用するかどうかはわからないのですが、キャッチャーの中で一番彼らが優れていると首脳陣が思ったから起用されているのです。他のキャッチャーたち、もしかしたら今シーズン限りで引退に追い込まれるかもしれませんね。

オリックスでは興南出身・宮城が牽引

 その視点でそれぞれのチームを見ていってください。安定感のある選手がたくさんいると、今年は優勝だ!と思いたくなるかもしれません。しかし、その選手が一年間を通して好調を維持することは不可能です。控えている選手たちが目をギラギラさせているからこそ、チーム全体が強くなっていくのです。「聖域」が多いチーム、優勝候補と言われるチームが、一見強そうには見えていたけど蓋を開けてみればそれほど強くなかったということがよくありますが、それはレギュラーが固定されてしまって競争があまりないチームだからではないでしょうか。逆に昨シーズンのオリックスは、沖縄が生んだプロ2年目の宮城大弥(興南)が「左のエース」の称号を得て活躍しましたね。彼だけではありません。高校からプロに入って1年目や2年目の選手を、育成期間だから2軍でじっくり育てようなどと悠長なことを言っていないで思い切って起用したチームが上位にいるように思います。

興南高校出身のオリックス宮城大弥投手(右、宮城選手インスタグラムより)

 3月26日はオリジン・コーポレーションのお笑いライブに行きましたが、こういったステージイベントも、いつまでも同じ人がトリやトリ前を務めているようでは空気が淀みます。「聖域」を作らずに新しい人をどんどん起用していくことが大切なのですね。

リラクゼーションと厳しさのバランス

 「聖域」を作らないのは企業や学校などの組織も同じです。営業成績や生徒の成績を上げられなくても誰からも注意されず、地位を失うことも失職することもない職場はきっと働きやすいはずです。でも、緊張感に欠けますので数字は上がりませんし、組織は弱体化していきます。間違いなく倒産する日は刻一刻と近づいてくるでしょうね。組織作りはその点で難しいと言えます。非常にリラックスした職場は離職率が低く、満足度の高い職場かもしれません。しかし、各個人が「数字を落とすと大変なことになる」という危機感を持っていないと、気がついたら組織全体が堕ちているということになってしまいます。リラクゼーションと厳しさのバランスをうまく取ることが管理職にとってはもっとも大切な仕事だと言えるのかもしれませんね。

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