津波警報発令前に迅速対応 企業の危機管理と社会貢献とは
- 2022/1/17
- 社会
災害関連死も含め、6434人が犠牲になった阪神・淡路大震災から今日で27年。突然襲い掛かる災害から私たちはいかに命の安全を守るのか。個人として、企業として備えておくべき危機管理を考えてみた。
南太平洋に浮かぶトンガ諸島の海底火山「フンガ・トンガ フンガ・ハアパイ火山」が大規模噴火したのは15日午後1時10分頃(日本時間)。噴煙の直径は北海道に相当するもので、その余波は日本列島にも及んでいた。
噴火に伴う津波で高知県室戸市の佐喜浜港で漁船20隻以上をはじめ、列島各地で船舶が転覆した。奄美大島の小湊港で15日23時55分に観測した津波は120センチ、岩手県久慈で16日午前2時26分に110センチを記録した。
日本列島東部沿岸や奄美群島、トカラ列島、沖縄諸島に16日0時15分、津波警報・注意報が発令されるなか、避難活動に迅速に対応した企業がある。大浦湾が一望できる名護市瀬嵩にあるエナジック瀬嵩カントリークラブだ。
海岸沿いの瀬嵩集落に住んでいる同社の岩井瑞希さん(51)は15日夜、各地で潮位が上がっていることをテレビ中継で知ると、矢も楯もたまらずクラブハウスに直行。同社の大屋文秀さんや上山優斗さんらと連携し、名護市の防災基地対策係にも連絡を取り、クラブハウスを開放する手はずを整えた。
同社が所有するカントリークラブ駐車場が名護市の津波緊急避難場所に指定されていて、緊急時には誰もが駐車できるように開放しているので、あえてクラブハウスに集結する必要はなかった。しかし、岩井さんの思惑は別のところにあった。
「クルマを止めるだけならそれでよいかもしれないが、津波となるとどうしても東日本大震災を思い出さずにはいられません。逃げ遅れた人たちも大勢いるなかで、高台に避難して助かった人たちは着の身着のままで長時間過ごしました。駆け付けた人々が暑さ寒さをしのげ、水と食料の心配をしなくて済むようにしたい。そのためにクラブハウスを役立てることが我々の使命だと思っています。当夜は20数台が避難のため駐車しましたが、その中には幼児と愛犬の親子連れもいました」(岩井さん)
瀬嵩集落は海抜が低く、津波の影響を受ける確率は高い。同社は住民の避難先だけでなく、津波で幹線道路が寸断された際のシミュレーションにも抜かりがない。
「ゴルフ場は集落より高台にあるので、ひとまずここまで来れば安全です。海沿いに延びる国道331号線が寸断されても、旧林道を通って名護市に抜けられるように市と連携協力しライフラインの確保に努めます。東日本大震災や阪神・淡路大震災で学んだことは、何よりも『人命第一』であること。そのためには常に危険を想定して、それに見合った備えと訓練を社を挙げて取り組んでいます」(岩井さん)