今あえて問う「首里城火災の責任」(下)

 
焼け落ちた首里城

 「沖縄のシンボル・魂・アイデンティティー」と称された首里城が消失してから10月31日で2年が経過した。その間、国内外から寄せられた寄付金は53億2,594万3,868円に達した(10月31日現在)。再建こそが前向きな「未来志向」を疑わない世論が支配するなか、原因追及と管理責任の明確化なくして再発防止はないと、再建に前のめりな世論を横目に見ている人たちがいるのも事実だ。

(上)では那覇市消防局が県に提出した報告書を基に書かれた再現劇のあらすじを紹介したが、(下)ではそこから見えてきた事実と美ら島財団の杜撰な管理態勢に迫る。

通電していたのは5系統だけ

 再現劇「責任者出てこい!」の第一幕は、火災から約9カ月前の2018年2月、正殿1階の観光順路を照らすLEDを設置するため、「本当はだめなんだけど」とその不当性を知りながら、分電盤の横にコンセントを付けてたこ足回線で電源を確保する様を描いた。

 実は記者は初期の頃、出火原因はイベント業者が正殿の御庭(うなー)で作業をするためのLEDライトが作業員退城後も照り続け漏電した、と思い込んでいた。しかし那覇市消防局は、火元である正殿とは別のところから電源を取っていて、その電源も作業終了時に美ら島財団職員立ち会いの下、ブレーカーを落としているとして、イベント配線は原因ではないと否定している。

 正殿のほぼすべての電気系統は21時半になると自動的にブレーカーが落ちるようになっていて、例外的に通電していたのは分電盤以外の以下の5系統だけである。

①防犯カメラ、②熱探知機と煙探知の火災報知器、③セキュリティー会社の防犯探知機(赤外線人感センサー)、④天井に増設された照明の配線、⑤分電盤の横から取った延長コード

 報告書はまず、分電盤内部はショートの痕跡はないとして否定。①と②は配線が金属管の中を通っていて、たとえショートして発火しても周囲に燃え移らないと否定。③は1階天井にむき出しで配線されていたが、このシステムが火災を最初に通報しており、ショートはしていなかったと否定。④は火災当時、切電されていたので通電はないと否定。残る疑惑は⑤のLED照明周り一点である。

報告書の行間から訴えるものは

 報告書は、「延長コードとLED証明の設置場所は、一般観覧者が通る場所であり、延長コードや配線の固定や保護はしていないとのことから、引っ張りや踏みつけ、いたずら等による断線や配線被覆の劣化などがあったとも考えられ、埃や水分等の影響による延長コードとLED照明のプラグ接続部分でのトラッキングについても可能性は否定できない」として、「後付けコンセントに接続された延長コードからLED照明のスイッチ部分までの、電圧が印加(編集部注・回路または装置に電圧がかかること)していた部分で何らかの電気的異常があり、出火原因となった可能性が考えられる」と書いている。

 しかし「火災のあまりの猛烈さに、物証の損傷が激しく、この電線のショート痕を鑑定できなかったことから、出火原因は不明」と結論付けた。

 「可能性が考えられる」と述べておきながら、「原因は不明」と結論付けるのは、何らかのバイアスがかかったか、意識したとしか思えない。ともあれ消防局は、①~④の可能性をすべて否定する状況証拠を積み上げ、⑤だけに疑いの余地を残した。「科学的根拠は示したから、あとは読む人が判断して」との思いが行間から訴えているようだ。

 それにしても、たこ足の延長コードをむき出しで9カ月間も放置していたことになる。それ以前にも、消防局は火災の2年前の2017年12月、首里城正殿等の防災上の欠陥を指摘していたにもかかわらず、財団は適切な対応を取っていなかったことが分かった。

 再現劇第二幕は、慌てふためく2人の警備員が登場する。最初に鳴ったのが熱探知機と煙感知の火災報知器ではなく、セキュリティー会社の防犯ブザーだったが、いずれも定期点検では異常が認められなかったことから、電源は入っていたかが疑われる。再現劇では、先輩が「本部の奴ら、夜になって煙検知器のスイッチを入れるのを忘れて帰りやがったんだ」「いつも偉そうにしやがって」と愚痴っている。

初動が機能せず 消防隊を誘導以前の問題

再現劇での消防隊

 第三幕。防犯ブザーが鳴った時点からの時系列はこうだ。防犯ブザー鳴る→(6分)熱探知火災報知器の火災警報→セキュリティー会社→消防に通報→(3分)消防現場到着→放水開始。消防は出動態勢から3分で到着しているものの、放水が始まったのはその17分後である。

 現場に駆け付けるのもマニュアルに反し1人で、消火器も持たずに行っている。放水銃に近づく以前の初動がほとんど機能しなかった。これらができていれば、6棟が全焼するほどの大火には至らなかったのかもしれない。

 消防への通報が遅れたのは、通報したのは警備員ではなくセキュリティー会社であり、放水が遅れたのは警備員が火元を把握しておらず、消防車を誘導できなかったからである。隣接の自治体からも応援の消防隊が出動するも、60台が首里城周りの周回を余儀なくされた。警備員だけでなく、管理人も火事が起きていることさえ知らなかったのだから、誘導以前の問題と言えよう。

 第四幕では、隊員たちは城門を次々と突破し、火元にたどり着きながら途中で水切れして天を仰ぐ。高い職業倫理を持って駆け付けた隊員たちの無念さがにじみ出る。水切れの原因は本来、十分な量を蓄えておくべき貯水槽の水が満たされていなかったからだ。

「管理責任を明確にしなければ再発防止につながらない」

德永信一弁護士

 第1回口頭弁論を終え、城岳公園で円陣を組んだ「首里城火災の管理責任を問う沖縄県民の会」。原告団の德永信一弁護士は、次回法廷(1月27日)に向け力を込めた。

 「疑問は山のようにあるが、まずは原因不明としているLED照明の接続コードの解明。セキュリティー会社の火災検知器の電源が入っていたのか。なぜ警備員が通報しなかったのか。なぜ消防を誘導できなかったのか。貯水槽の水は十分でなかったのはなぜか。セキュリティー会社と警備会社の連携は取れていたのか。そもそも火事を想定した訓練を施していたのか。管理者団体としての美ら島財団の当事者意識を疑わざるを得ない。管理責任を追及し明確にしないと、再発防止にはつながらない」

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友寄 貞丸

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伊江村出身。1990年から主に中国、台湾の取材執筆活動を続ける。2014年11月Uターン。著書に『雲南哀楽紀行』(愛育社)など。国境を越えても一線を越えない旅と取材を信条とする。

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