モバイルバッテリーのレンタルサービスで変わるか沖縄の仕事スタイル
- 2020/8/23
- 経済
外での仕事中にスマートフォンやPCのバッテリーが切れて困ってしまった経験は誰にでもあるだろう。だからと言って、鞄にモバイルバッテリーを入れて持ち歩くのは重たい。
そんななか、今年1月から専用アプリを利用して”いつでも充電、どこでも充電”をコンセプトとしたモバイルバッテリーのレンタルサービスがスタートしている。インターネットベンチャー企業「琉球インタラクティブ株式会社」(本社:宜野湾市)が開発したプロダクトで、充電GO!という。
すでに沖縄県内のファミリーマートを中心に、御菓子御殿やブルーシールなど、県内約500か所・600台(2020年8月時点)の設置が完了している。
今回、その開発秘話を中心に事業部長・石川 雪飛(いしかわ せつふぇい)氏にうかがった。
中国の流行を沖縄市場向けにローカライズ開発 開発のきっかけは「あったらいいな」
元は求人メディアの営業として県内各地を巡っていた石川氏。移動が多い営業職では、ナビゲーションもGoogleMapを利用する上にクライアントとのやりとりもスマートフォンで行うため、とにかく充電の減りが早かったという。
とはいえ資料やPCが入った鞄に、一瞬しか使わないであろうモバイルバッテリーを入れて持ち歩くのは重い。だが充電の残量を気にしながら行動するのも馬鹿らしい。そんな想いを抱えていた中、中国に出張する機会があった。
中国ではモバイルバッテリーレンタルサービスが流行していた。街中の至る所にバッテリーステーションが設置されており、自然と活用するようになったという。その便利さを実感した石川氏は「これを沖縄版として開発できないか」と思った。
着想を得たのは2019年夏。その後すぐに市場リサーチを行ったところ、前年の2018年度沖縄県への外国人観光客入域客数は300万800人と11年連続で過去最高を達成しており、中でも中華圏(香港・台湾含む)からの観光客数は全体の60%以上を占めていた。また、訪沖外国人観光客における観光消費額でも中国が最も高く、需要の高さを確信した。
県内企業の協力を得て実現した開発
早速、開発に取りかかったが、それに要した期間はわずか半年。これは同社だからこそ実現できたスピードである。その一方で、沖縄初導入ならではの困難もあった。
このサービスを始めるにあたってまず最重要のポイントは、新しいサービスであり日本中でもプレイヤーが少ない中「どこで借りることができてどこで返却できるか」を決めることだ。飲食店やホテルはバッテリーを借りるためだけに立ち寄るには気まずさが否めないため、設置個所は”お客が気軽に出入りできる場所”である必要があったのだ。つまり、最初は何としてでもコンビニに設置する必要があった。
幸いにもこのプロダクトに沖縄ファミリーマートが共感してくれたため、コンビニ設置はすぐに叶った。これがないと、スタートダッシュをきることができなかったと言える。第一関門はクリアした。
また、IT企業の強みを最大限活用し、システムはすべて自社で開発した。自社開発のため、比較的安価で理想のUIを実現できた。これによって利用料を安く抑えることにつながった。
ところが、ひとつ困難なことがあった。それはモバイルバッテリーの安全性の試験や認証取得などの法令対応だ。ハードウェアについては、中国深セン市のパートナー企業に製造を委託しているが、実は海外からバッテリーを輸入だけでは日本でサービス提供ができないらしく、第三者による評価試験や各種認証の取得など、細かい条件をクリアする必要があった。
その際、直接、経済産業省に問い合わせるなど思いつく限りはすべてやったが、やはり実例が少ない中、実際に輸入した経験を持つ周囲の企業からのノウハウ提供は有難かったという。
「弊社は以前から、沖縄全体を盛り上げたいという想いがあり、その想いに共感してくれる企業からたくさん助けていただき、今回のプロダクトが実現しました」と石川氏。
インバウンド・国内旅行客・県民すべてに利用価値あり
充電GO!の使い方は簡単だ。専用のアプリで会員登録もしくは公式LINEを友達追加した後、QRコードを読み取れば、すぐにモバイルバッテリーをレンタルすることができる。設置個所で借りて、設置個所で返す。それだけだ。(貸出、返却場所は同じである必要はない)
充電GO!の特徴は大きく分けて3つある。ひとつはその手軽さだ。アプリ・公式LINEにて近くのステーションを探すこともできるため、借りたい時にすぐ借りることができ、同じく返却も容易にできる。
沖縄デザインブランドDOKUTOKU460による、各種コラボデザインも可愛い。
企業とのコラボで描かれたコラボデザインだが、貸出も返却も場所が自由に選べるため、御菓子御殿のデザインが御菓子御殿にあるわけではない。つまり目当てのデザインに出会えるかどうかは運任せなところがある。
そして3つめの特徴は、価格の安いことだ。最初の1時間は100円、24時間までは200円、さらに以降7日間までは1日追加100円に抑えられている。
ただし利用時間が168時間(7日)を超えた場合、利用料800円+延滞料1480円(合計2280円)がかかってしまうが、実はこの場合、返却しなくても良い(ので、欲しい人はそのままもらってしまっても良い)。いずれにせよクレジットによる課金となるため、申請などは不要である。
この“返却しなくても良い”というのは、実は特典でもある。気に入ったデザインを当てることができたなら、いっそのことそのまま保有することもできる。
アプリ・公式LINEのUI(ユーザーインターフェイス)も分かりやすい。
MicroUSB、Lightning、USB Type-Cのいずれにも機種対応しており、ほぼ全てのモバイル機器を充電することができる。スマートフォンはもちろんiPadやIQOS、ゲーム機(ものによる)なども充電が可能なので、主張時やプチ旅行、県民による県内ホテル宿泊などにも使える。
今後の目標について石川氏は、「県内1000か所設置を当面の目標として掲げ、認知を広げながらも新しい常識を作っていきたい。沖縄から日本全体へ、『買う』選択しかなかったモバイルバッテリーの『借りる』選択肢も定着させていきたい」と語る。
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