クルーズ船、3バース体制目指す 那覇港管理組合が長期構想を策定
- 2022/5/7
- 経済
近接するアジア地域や人口減少社会の到来など、日本、沖縄を取り巻く社会情勢が変化していることを受け、那覇港管理組合が20~30年後のビジョンを描いた長期構想を策定した。基本理念は「舟楫 (しゅうしゅう)をもって万国の津梁となす、世界と沖縄・日本全国の人・物・文化を繋ぐ”みなと”」。沖縄の地理的優位性やリゾート地としての魅力を生かし、沖縄、日本、アジアの成長に貢献する拠点港としての発展を目指す。クルーズ船用のバースは将来的に浦添ふ頭を含め3バース体制の構築を目標としている。
日本港湾協会の須野原豊理事長を委員長とする検討委員会は、港湾関係者に加え、経済や観光など様々な分野の有識者で構成した。2013年2月から2021年10月までに計5回の会合を開き、同12月~2022年1月にパブリックコメントを実施。同3月の第6回会合で構想を取りまとめ、4月28日に公表した。
7つの戦略が柱 アジアの物流拠点港に
現在の那覇港の主な課題として、船舶大型化や貨物量増加に対する岸壁延長の不足、ふ頭の狭隘化、臨港道路の慢性的な渋滞、港湾運営に係る船舶の係留環境の不足、整備後50年程度が経過した施設の老朽化、交流・賑わい機能の不足などを列挙した。
新港ふ頭では、現行港湾計画でコンテナ船による欧米向け国際トランシップ貨物の取り扱いを想定したものの、これまでに実現せず、外貿貨物量は目標値の12%にとどまる。一方、入域観光客数の急増に伴い、内貿貨物量は目標値の137%となり、主に内貿ターミナルが逼迫しているという。そのため、「アジアの中継拠点港としての展開へと物流戦略を見直す必要がある」と指摘した。
それらの現状を踏まえ、構想では「アジアのダイナミズムを取り込み、自立型経済の構築を支える国際流通拠点(物流・産業)」「観光の高付加価値化に導く(交流・賑わい)」「沖縄の経済・生活の強靱化を支える(安全・安心)」「持続可能な発展を実現する(持続可能な開発)」の4項目を目指すべき将来像に挙げ、以下の7点を実現に向けた基本戦略に掲げた。
(1)国内外航路及び空港の連携や流通加工機能等を活かした「アジアと日本を結ぶ中継拠点港」化による航路網の充実
(2)空港との連携や物流・交流・商流の相乗効果による臨空・臨海型産業の集積及び創貨
(3)多様なクルーズを迎え入れ、沖縄の魅力を発信する快適な玄関口の形成
(4)万国津梁のロマンを感じる、国内外の人・物・文化等の交流を生むウォーターフロント空間の形成
(5)平時及び災害時等の安全かつ安定的な港湾利用環境の確保
(6)経済活動と豊かな県民生活、自然環境が共生する良好な港湾環境の創出
(7)人材と技術を育成する実証フィールドとしての港湾空間の活用
クルーズ寄港回数全国一 さらなる増加見込む
2019年に年間のクルーズ船寄港回数が260回で全国1位になった那覇港。コロナ禍でクルーズ船の寄港は停止しているが、2022年の年間寄港予約数は331回(2021年10月末時点)となっており、依然としてクルーズ船社の高い関心がうかがえる。
19年には国土交通省から「国際旅客船拠点形成港湾」に指定されており、将来的にはさらなる寄港の増加が見込まれ、管理組合は「那覇港の受け入れ体制を検討する必要がある」としている。
構想では既設の那覇クルーズターミナル(若狭)と整備中の第2クルーズバース(新港ふ頭)での受け入れで対応し、「中長期的には浦添ふ頭を含めた3バース体制の構築を図る」と今後を見据える。さらに整備中の本部港やクルーズ船用岸壁の計画が検討されている中城湾港(新港地区)を含め、将来的には沖縄本島内で5バースの整備を目標としている。
物流空間に必要な岸壁数、倉庫用地面積を推計
港湾内各地区の特性を踏まえ、様々な機能の調和がとれた空間利用が実現するように港湾空間利用計画(ゾーニング)も設定した。
物流機能の中心は引き続き新港ふ頭と浦添ふ頭とし、両ふ頭で一体的利用を図る。燃料等の危険物を扱うゾーンは新港ふ頭北側に配置。離島航路の拠点はこれまでと同様に泊ふ頭とし、那覇ふ頭は貨客船ゾーンとする。
親水レクリエーションゾーンを那覇ふ頭から新港ふ頭の入口部分までの連続的な水際線に加え、浦添ふ頭の南北に長く配置。浦添ふ頭北側に自然環境保全ゾーンを置く。
物流空間については県内総生産や那覇港と中城湾港の機能分担などを考慮し、将来の取扱貨物量を推計する。その上で必要な岸壁数も推計し、荷捌きや保管、倉庫など岸壁背後に必要な用地面積を確保する。
また、自立型経済の構築に向けた臨空・臨港型産業の導入を戦略的に図るため、「新港ふ頭と浦添ふ頭の両方に、那覇港総合物流センター1~3期分と同程度の面積を別途確保する」とした。