「絵に描いた餅じゃなく、食べられる餅を」 企画特化の独自路線切り拓く「miimuN」
- 2022/1/11
- 経済
「沖縄からインパクトを!」というフレーズを合言葉に官公庁や自治体、民間も含めた公募案件への提出用企画書を作成する合同会社「miimuN(ミームン)」は、県内では珍しい「企画」に特化した会社だ。公募を希望するクライアントとの議論やリサーチを重ねて企画を作成し、プレゼンまでフォローすることもある。
「私たちが作っている企画書の1つ1つも『インパクト』で、それは明日の沖縄を今日よりちょっとでも良くなるように“画策”するためのものなんです」と語る代表社員・中村理乃さんの言葉には揺らぐことのない決意がこもっている。
100件以上の企画・提案実績
miimuNは2019年に中村さんが立ち上げた。これまでに行政機関の施設指定管理などの公募案件、観光や福祉など幅広いジャンルのプロモーションについて100件以上の企画・提案を取り扱ってきており、受注採択額は総額で19億円超にも上る。社員は女性3人と非常にコンパクトだが、中村さんの迸る熱意でエネルギッシュに突き進んでいる印象だ。
中村さんは大学卒業後に広告代理店での営業職を経て、企画の思考を身につけるためにコンサルティング会社に転職。その後独立した。「自分ができることの中で、消去法で残ったのが企画だったんです」
フリーランスで活動するプランナーは、細分化されたジャンルの中ではいるが、miimuNのように分野問わず企画を請け負う所はあまりない。クライアントの業種業態に関わらず、専門であろうがなかろうが企画作成の依頼を受けたら関連する物事を「死ぬほどリサーチ」する。その上で「依頼者の持っている答えを引き出しながら分かりやすく肉付けしていくんです」(中村さん)
現在、企画を立てられるプランナーという肩書きの社員が常駐している企業は多くはないという。そうなると、専門知識が無い社員が通常業務をこなしながら公募での選考を見据えたクオリティの高い企画を作成することは難しい。そこに“企画屋”miimuNの出番があるというわけだ。
「実現しなければ意味がない」
これまでに沖縄への思いを持った人が作成した方がいいような案件を、企画を通すノウハウを持った県外の企業が受託する場面に出くわすこともあった。
中村さんは「思いがどれだけあっても、叶わなければ意味がない」ことを痛感したという。企てて、画策する、と書いて“企画”。「実現につながって初めて企画に価値が出ます。“絵に描いた餅”じゃなくてあくまで“食べられる餅”を目指すのが私たちの姿勢です」。湧き上がるモチベーションの一端には、そんな思いもある。
「ここまで芯を持った人は珍しい」と中村さんを評するのは、miimuNの“おかん”こと仲里陽子さんだ。中村さんとは前職のコンサル会社で出会ってコンビを組み、現在の形に落ち着いている。仲里さんは「経理という名の何でも屋さん」で、総務から制作までのあらゆる業務に加えて、時には中村さんのプライベートまで世話しているという。「だから“おかん”なんです(笑)」(中村さん)。
仲里さんはこれまでに公募に参加するクライアント側で事務仕事をした経験もあり、企画について依頼・制作の両面での視座を持っている。その中で、作成され採用された企画が「誰のためのものなのか」という強烈な違和感を覚えることが多々あったという。
「きれいにまとめられた企画は、選考されること自体を目的化してしまっていることも多くて、その後の運用が実のないものになってしまうケースもあります。また、3~5年のプランで作成してたとしても、その時々の時勢に合わせて刷新されずに『誰のために、何のためにやってるの?』って何度も思ってきました」