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「こども庁」構想に迫る②霞が関の縦割りは本当に乗り越えられるか
- 2021/8/31
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結果的に“三重行政”に
しかし、両省に限らず、業界団体やそれに支えられる国会議員などの反対も強く、一元化はなかなか進みませんでした。この停滞を打破すべく、1つの折衷案が浮上します。幼稚園と保育所の枠組みを残しつつ、両方の要素をミックスした「総合施設」を新たに作ろうという考え方です。これが2006年に制度化された現在の「認定こども園」です。幼稚園と保育所の機能を総合的に提供できる施設として、保護者の就労状況にかかわらず、0歳児から小学校入学前の子どもであれば誰でも利用できるというルールにしました。
認定こども園制度が創設できた勢いで、幼稚園・保育園もすべて認定こども園に移行するという本来の一元化を推す議論もありましたが、結局、文部科学省の幼稚園、厚生労働省の保育園に加えて、内閣府が所管する認定こども園が併存するという、いわば“三重行政”の状態で落ち着いてしまい、現在に至ってしまっているのです。
幼保一元化を避けたいのは霞が関だけじゃない
幼保一元化には様々な見方や報道がありますが、一般的に、省庁の縦割りにチャレンジしたときに起こる出来事の基本的な捉え方として、省庁、国会議員、業界団体という既得権益を守ろうとする鉄壁の関係が立ちはだかるということです。これは国に限ったことではなく、地方にも当てはまることです。こうした政官財の癒着は「鉄のトライアングル」とも言われます。つまり、自身の組織を守りたい、ルールを変えたくないと考えるのはむしろ官僚だけではなく、現在の仕組みで成り立ってきた政界、財界も同じで、これらが裏に表にうまく連携して改革に対抗するのです。
今の仕組みを壊すことだけが正解か
鉄のトライアングルを説明すると、何だか悪いイメージだけが先行しそうですが、もちろん彼らにも最もな言い分があります。
「誰が新しい仕組みを作り、誰が責任をもってその仕組みを社会に育てていくか」
ということです。総理はコロコロ変わっても、一度作った制度は簡単に元に戻すことはできません。幼保一元化を本当にやるとなれば、最善の仕組み=法律を作る国会議員、仕組み=新制度を運用する官僚、そして何より幼児教育・保育業界、すなわち今頑張っている幼稚園や保育園全体が、しっかり納得して、新制度に移行できるように進めることが最も重要です。
今実行されている1つ1つの政策を丹念に精査する大作業
幼保一元化の趣旨に賛同しない方はほとんどいないにもかかわらず、実際に制度化を試みれば、責任を負う当の政官財が立ちはだかる現実。これは、こども庁構想でも同じです。すでに各省庁で取り組んできた政策があり、それぞれ積み上げてきた考え方・やり方があります。これらをただ壊して、組み立て直せなければ結局、元も子もありません。1つ1つの子供関連政策を丹念に精査して、整合性を図りながらこども庁という1つの組織にその業務を集約していく大作業。これこそ、こども庁の実現に向けて、とても重要な制度設計の根幹となるのです。
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