「言われてやるのではなく、自分からやる」伊平屋村の名嘉律夫村長に聞く(下)
- 2021/12/22
- 政治
――米は百姓の足音で育つと言われるほど、繊細で手間のかかる作物。稲作は奥が深いですよね。
「何年も作ってきましたが、2回として同じ米はできないです。それに伊平屋は暖地なので、雑草の勢いがすごく、雑草との戦いです。農薬散布も軽トラにタンクを積んで大型噴霧器で散布するのではなく、農業用ドローンを使えば減農薬が可能だし、ドローンの使い手の雇用も生み出せます。ITを活用すればスマート農業に転換できますからね。やるかやらないかは農民の意識です。次の世代に引き継げるような新しい農業を取り入れ、行政としても推進したいです」
養殖魚の販路を開拓していきたい
――漁業の話も聞かせてください。今回の軽石漂着では、養殖生け簀の魚が軽石を餌と間違えて死ぬなどの被害を受けています。御村ではヤイトハタ(アーラミーバイ)の陸上養殖が成功を収めていますね。
「養殖技術は確立したと思います。陸上養殖なので生け簀に比べてどうしても割高にはなります。方向性として自然に近い餌をやってコストを下げ、販路を開拓していきたいです。あと、魚種もキスを導入すべく今、研究段階にきています」
――モズクやアオサも養殖していますね。
「モズクは海中なのでさほどの影響は受けていませんが、アオサは海面なので軽石の小さなかけらが付着しています。被害額はこれから算定して上がってきますが、おそらく国の災害給付の対象になるはずです。今から申請に備えておきます」
「こんな平穏なところはどこにもないです」
――ところで、本土ではどんな仕事をなさっていたんですか。
「建築会社に勤めていたのですが、宮ケ瀬ダム(神奈川県)の関連工事を受注していた企業の役員から誘われて転職しました。橋脚や作業道路などの関連工事に携わったのですが、最初は規模の大きさに圧倒されました。
残業、深夜勤務は当たり前、8~9カ月休みなく働いたこともあって、今では“ブラック企業”と言われかねない働き方でしたが、充実していました。与えられた仕事を工期に間に合わせなければいけないので、大変でした。だいぶ工期が遅れていて、次から次へと仕事があるので、家にも帰れないほどの時期もありました。
それでも弱音を吐かずにやってきました。現場には危ないスジの人たちもいっぱいいたが、付き合わなければいけない。大変なことは大変でした(笑)」