沖縄のお金事情「借金が多いと感じる」1位「金融教育を」3位
- 2021/7/18
- 経済
沖縄県金融広報委員会(事務局・日銀)が2019年に全国を対象に実施した金融リテラシー(お金の知識・判断力)調査によると、沖縄県は「お金を借り過ぎていると感じている人の割合」が全国1位、「消費者ローンを利用している人の割合」が全国3位、「金融トラブル経験者の割合」が全国3位と、沖縄県民がお金で悩んでいる現状が浮き彫りになった。
2022年度から高校家庭科で導入される「金融教育」では、家計管理や資産形成に触れるよう規定されている。「お金を借り過ぎていると感じている人の割合」が全国1位の背景には何があるのか?金融教育の導入まで1年。「学校で金融教育を行うべきと思っている人の割合」も全国3位と注目度は高い。沖縄のお金事情をまとめた。
借入れ目的(個人)の第1位は「趣味/娯楽費」
金融リテラシー調査は2016年に続いて2回目で、全国18~79 歳の25,000 人を対象にインターネット上で実施した。
日本貸金業協会が2019年に実施した別の調査では「借入申込み時の資金使途」を個人向けに尋ねた結果、沖縄県は「趣味/娯楽費」が41.7%と最も多く2位の「食費」17.0%の2倍以上だった。
一方で事業主は、一時的な運転資金と経常的な運転資金の両区分で「取引先への支払い」がそれぞれ55.5%(一時的)、28.3%(経常的)となり資金繰りの厳しさが露呈した。
事業主の資金使途を全体的に見ると、設備資金等の支払いが32.9%、従業員への給与等の支払いが34.3%(一時的+経常的)だった。
小中零細に高い借入需要
さまざまな理由で店舗を開けられない場合でも、店の賃料や従業員へ給与を支払わないといけないため、自己資金が少ない中小零細企業では売上が立つまで借入するケースが多いという。
リース会社や不動産担保融資など沖縄で30年以上、貸金業に携わる我如古盛敏さん(56)によると、一般的に企業が銀行から融資を受ける際には3期分の決算書や業歴などを参考に判断される。業歴や実績が少ないベンチャー企業にはハードルが高く、約10年前から沖縄でも銀行以外の貸金業社がベンチャー企業へ融資するケースが増えているという。
貸金業社は銀行に比べると利率は高いが、例えば事業資金1億円が必要な場合に銀行で7,000万円しか融資を受けられなくても、貸金業者から不足分の3,000万円を借入して起業出来るため事業主からの需要は高い。ベンチャー企業の創設や資金難に喘ぐ企業の事業運転資金を下支えしているのも事実だ。
実際に経営難で銀行の融資条件をクリア出来なかった法人が貸金業社を活用して事業を立て直した事例も少なくない。実際に県北部の機関病院は約5〜6億円を借入し、事業再建に成功している。
「老後資金を計画」と「緊急時の資金を確保」の割合は全国ワースト2位
老後資金2,000万円問題が叫ばれる中、「老後の生活費について資金計画を立てている人の割合」「緊急時に備えた資金を確保している人の割合」は全国ワースト2位だった。
加えて、「資産・負債の現状に満足している人の割合」はワースト3位、「投資信託を購入した事がある人の割合」は全国最下位だった。
資産については年収500万円以上の割合が全国34.4%に対し沖縄が19.3%と全国を15.1ポイント下回った。さらに、金融資産額が500万円以上の人の割合は全国28.9%対し沖縄が15.9%と全国を13.0%下回る結果となった。
「お金を借り過ぎていると感じている人の割合」が全国1位という結果も鑑みると、生活や返済に追われてマネープランを立てられずに、備えや資産運用の余剰資金を確保できていない可能性もある。
我如古さんは「ギリギリの生活をしている人は借入れせざるを得ない。所得も低いのに返済も苦しいという二重苦に陥ってしまう人が多い」と実情を語った。
融資の際には、勤務年数・年収・住宅(不動産)・借入先・家族・対面での印象などを合算したスコアリング方式で決めるのが一般的だが、沖縄は殆ど審査基準に当てはまらず融資担当者の目利き力にかかっているという。
「皆がやっているから大丈夫」沖縄県民に多い横並び行動バイアス
〝皆がやっているから大丈夫〟〝皆と同じが安心〟という軸で判断・決断してしまう「横並び行動バイアスが強い人の割合」は、全国16.7%よりも高い20.7%だった。我如古さんは沖縄特有の事業として、借入者どうし、業者どうし、保証人どうし、と横の繋がりが強くネットワーク内で情報を密に交換している実態を上げた。
「借入時に他の商品と比較した人の割合」は全国54.0%と比べて沖縄は47.4%と低く、自分とは考え方が異なっても周囲に合わせて行動してしまう“横並び行動バイアス”の強さが顕著に出た。
貸金業者のさまざまな事業形態
貸金業社と聞くと誤解する消費者もいるが、多様な事業形態がある。全国約1,700社の貸金業者がそれぞれの特色に応じて個人や事業主のさまざまな資金需要に応えている。
クレジットカード会社や証券会社など生活に密着した業者も含まれており、人びとの暮らしや事業継続を支えている面があるのも事実だ。
利用者が正しい金融知識・判断力(金融リテラシー)を身につけて、身の丈に合わせて活用すれば金融トラブルに見舞われることもない。
一方で貸金業者側も企業努力が求められる。我如古さんは「各社が法令遵守を徹底し市場から信頼を得ることが企業存続の術であり、業界自体の底上げにもなる」と方向を示した。
「学校で金融教育をするべき」は全国3位
沖縄のお金事情を探ると課題が山積みだが「学校で金融教育を行うべきと思っている人の割合」も全国3番目に高く、正しい金融知識・判断力(金融リテラシー)を身につけたいと考えている県民も多い。
これまでの金融教育は「騙されない」「無駄づかいしない」などが主だったが、新しく導入される「金融教育」では株式や債権、投資信託など資産形成も盛り込まれている。金融トラブルに見舞われることなく経済的に自立した社会人を増やしたい国の施策がどう浸透するのかー。