沖縄で無痛分娩 経験者ママ、痛み和らぎ「ひとつの選択肢に」

 

 麻酔薬によって陣痛を和らげる「無痛分娩」。
 欧米では実施率が60%以上と一般的だが、日本では6.1%(2016年、日本産婦人科医会)にとどまる。安全面の不安や料金の高さなど日本ではネガティブなイメージを持っている人が多く、自然分娩を選択することが多いようだ。

 那覇市に住む31歳の平良さちかさんは、3月に無痛分娩での出産を経験した。無痛分娩への抵抗感はなかったのか、親や友人など周りの反応や実際にかかった金額など、話を聞いた。

 痛みはどのくらいなくなる?

 無痛分娩といっても、完全に痛みがなくなるわけではない。麻酔で出産時の痛みを“和らげる”方法で、多少陣痛の痛みを残して赤ちゃんが出てくる「いきむタイミング」が分かるようにする。

 ―陣痛から出産までの痛みは?
 「麻酔を打つ前の陣痛は普通に痛かった。麻酔後は痛みが引いて落ち着いた感じ。私の場合は、麻酔が効きやすい体質だった。痛みというよりも、あ、何か動いているなという感覚だった。数値をみながらいきむという感じで全然痛くなかった」

―会陰切開後の縫合の痛みは?
 「縫う時は、麻酔を打っているから痛くなかった。麻酔が切れた後は、縫われたところに違和感があった。ただ座るときにほんのちょっと引き伸ばされている感じ。全然我慢できない痛みではなかった」

出産後のさちかさんと息子

意外と周りは興味を持っている

 無痛分娩をしたことを話すと、友達から「実は気になっていたんだけど、聞く相手がいなくて」と言われたさちかさん。周りに話をしていくうちに、無痛分娩に興味を持っている人が多いことを知った。

 「無痛分娩をしたいけどできない、気になるけどできない。周囲の人の目を気にしている人が多い」と話す。さらに、「身近に無痛分娩で産んだことのある人がいないから心配になる人が多い」という。

 そのような人々に少しでも安心してもらおうと、さちかさんは自身のFacebookでも無痛分娩したことを投稿した。興味があれば話を聞きたい人が出てくるだろうと思っていた。

 「いろんな人に無痛分娩どうだったかとか、なんで選んだのとか聞かれた。選んだ理由?普通に産めるんだったら痛くない方がいいかな。ただそれだけ」と笑顔で言う。

 「その質問をされないくらい、無痛分娩が当たり前の世界だったらいい。なんでしたの?って聞かれる時点でやったらいけないのかとか、理由がないとやってはいけないって雰囲気になってしまう」と話す。

ネットで見る情報と実際は違う

 「知り合いに無痛分娩の経験者はいなかったけど、内地の方はわりと多いような感じがした」という。県内の助産師によると、無痛分娩で出産する女性は、本土に比べて沖縄は少ないという。

 無痛分娩への否定的な意見として、医療事故の報道や安全面の不安に対する声があるが、さちかさんに抵抗感はなかったのか。

 「抵抗感はなかったけど、周りにいなかったからどうだったのか聞きたかった。出産もはじめてで、無痛分娩の想像がつかなかった。出産は周りにたくさんいるから聞けるけど、無痛分娩がどんなものだったのか聞きたかったけど、周りにいなくて聞けなかった」と話す。

 さちかさんは、すぐは決めなかった。話を聞いてから決めようと無痛分娩をしている病院に話を聞きにいった。ネットで見たらどのようするかは分かっているけど、経験者から話を聞きたいと思った。病院で助産師に話を聞いて、「結構思っていたのと違う」と感じたそうだ。

親世代に多い「自然分娩派」

 さちかさんは、県内で浸透しない1つ目の理由を「親や周りの目が気になる」とあげた。さちかさんの場合は親の理解を得られたが、反対派の親も多い。

実際に「無痛分娩をしたいけど、親が反対している」という友人からも相談を受けた。家庭によっては、親から絶対に自然分娩でといわれ、元々無痛分娩があることを知っていても選択肢に入れない人が多いようだ。

 妊婦の親世代には、自然分娩で産まないと立派な母親ではないと思っていたり、医療ミスや後遺症など漠然としたリスクを感じたりしている人が少なくないことから、無痛分娩を選ぶことに対して理解を示してくれない場合があるという。

 また、自然分娩が主流だった親世代や周りに自然分娩が多いと、帝王切開も無痛分娩も痛みから逃れて楽な方を選んだという目があるようだ。どのような出産方法でもすべてが立派なお産であるが、「自然分娩で痛い思いをして大変だった」「お腹を痛めた子のほうがかわいい」「痛みを伴う出産を経験することで赤ちゃんに愛着が湧く」の価値観が親世代の中にあるのだろう。

思っていたよりも安かった

 無痛分娩が浸透しない2つ目の理由を「費用が高いと思われている」と挙げた。

 「ちゃんと調べる前、無痛分娩には十数万円かかるかと思っていた。実際ネットでもそういう金額での情報が出てくる。だけど、実際にはそれぞれの病院で価格がビックリするくらい違う。地域でも病院でも価格はだいぶ変わる」と話す。

 さちかさんは「実は、無痛分娩は思っていたよりも高くない」といい、「うちのところは通常の自然分娩にかかる費用プラス約3万だった。他の妊婦さんが別の病院で無痛分娩した時はプラス5万円って言っていた。同じ県内の病院でも、場所によって2万円の差が出るから、金額は本当にバラバラだよ」と話す。

 3つ目を「無痛分娩できる病院が少ない」と挙げた。麻酔科医がいないと出来ないなどの理由から、県内で無痛分娩ができる病院は数カ所に限られるという。

 そのため、さちかさんが出産した病院では、一緒に入院する人ほとんどが無痛分娩希望者。中には、子ども3人全員を無痛分娩で出産した女性の他、1人目を自然分娩、2人目を無痛分娩で出産したという女性がいたそうだ。

無痛分娩もひとつの選択肢

 同じ病院で無痛分娩の経験者と出会えたことから「話を聞いてイメージができ、安心してお産ができた」という。

 自然分娩も無痛分娩も出産は命がけだ。「近くにいる経験者に話を聞けたら理想。いなかったら、病院の人に相談をしてみる。知っている人に相談して安心するものがある」と話す。

 さちかさんは「需要や関心は高まっているように感じる。20代とか若い子はわりと抵抗感がなかった。今、無痛分娩する芸能人も多いみたいで、その影響もあるみたい」と話す。また「30代後半の年齢が少し経った人も無痛分娩をする人が多くなっている」と言い、年齢層を問わず理解が進みつつある現状を説明する。

 2018年に厚生労働省が示した資料によると、無痛分娩率は2008年で2.6%だったのに対し、2016年で6.1%と8年間で3.5ポイントも増加。日本での関心も高まってきている。

 さちかさんは「無痛分娩が良いとおすすめするわけではないけど、ひとつの選択肢であってもいいと思う」と話す。

 自然分娩、帝王切開、無痛分娩などどのような分娩方法でも、周りの目を気にせず、妊婦自身が自由に選択できるような社会になることを願う。

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安里 三奈美

安里 三奈美

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ボリビア在住3年、1児の母。フリーライターとして観光や沖縄県系コミュニティーについてWEBや紙媒体で執筆、寄稿等を行う傍ら、家系図や家族史・自分史の制作会社の代表も務める。2011年に県系の若者をつなぐネットワークを構築、県系若者が集う大会を世界各地で開催。2015ミスうるま。著書に「刻まれた21cm」(文芸社)

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