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カテゴリー:連載小説
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連載小説・宮城亜茶子の生活と意見 最終回
低いテンションのまま歩いているうちに、いつの間にか桜坂劇場の前まで来ていた。ずらりと並ぶ映画のポスターを見ていると、ド派手な格好をした黒人男性の姿に目が留まった。『サン・ラーのスペース・イズ・ザ・プレース』。… -
連載小説・宮城亜茶子の生活と意見 第十回
図書館から出ると、太陽はすっかり西に傾いて、海の方から涼しい風が吹いていた。しばらくハチミツ色の夕焼けを眺めたあと、亜茶子は前から気になっていた『ほしぞら公民館』のプラネタリウムに行ってみようと思った。しかし… -
連載小説・宮城亜茶子の生活と意見 第九回
日曜日、亜茶子はGMW号に乗って泉崎にある県立図書館に向かった。前日の夜、久しぶりに体重計に乗ったら七十キロが目前に迫っていて、衝撃と戦慄から〈明日はとにかく外出しよう!〉と決めたのだった。ここ数ヶ月は運動不… -
連載小説・宮城亜茶子の生活と意見 第八回
会社帰り、亜茶子はまっすぐ家に帰る気になれず、街をぶらぶら歩くことにした。仕事は平常運転で、波風のない一日だったが、なぜか神経が昂っていて、地に足が着いていないような心地だった。朝から降り続いている雨の影響も… -
連載小説・宮城亜茶子の生活と意見 第七回
毎月第三土曜日は〈裸足の会〉の日だ。この会は、亜茶子が久茂地小学校で苦楽を共にした同級生たちと開いている模合で、今年で結成十三年目になる。久茂地小学校は二〇一四年に廃校になって、跡地では新しい那覇市民会館の建… -
連載小説・宮城亜茶子の生活と意見 第六回
水曜日の夜、亜茶子は紫色の座布団の上に座って、録画していた大相撲を観ることにした。二十三歳の夏までは相撲に対して「喧嘩っ早いおデブちゃんたちのぶつかり合い」という偏見しか持っていなかったが、その年の秋場所で行… -
連載小説・宮城亜茶子の生活と意見 第五回
十六日祭の日。亜茶子は妹の和果子に車で拾ってもらったあと、ケンタッキーと上間天ぷら店をハシゴして首里の霊園に向かった。車の後部座席では、緑と黒の市松模様のマスクをつけた甥の満司郎と姪の柚子が鬼滅の刃の… -
連載小説・宮城亜茶子の生活と意見 第四回
花柄のマイバッグをGMW号の前カゴに入れて、アパートまでの道のりをひた走る。三分もしないうちに、レジデンス久茂地が見えてくる。就職と同時に移り住んだ1K・三万八千円の物件は、築三十年を過ぎて所々ガタがきている… -
連載小説・宮城亜茶子の生活と意見 第三回
働き方改革が始まる前から、亜茶子は十六時五十分に退社することに決めている。二十代の頃は必要のない資料整理や掃除をして時間を潰したものだが、もはやそのような勤労意欲はなく、「お疲れ様でした~」と流れるように言っ… -
連載小説・宮城亜茶子の生活と意見 第二回
グスク・トリオが揃った翌週の水曜日、玉城さんの「はいはいはい」が引き金となって、亜茶子の溜まりに溜まったストレスは爆発した。 「玉城さん、人の話は最後まで聞いてください! その二つの耳は飾りなんですか…